「大阪・関西万博」に願いをこめて!
~思いでの大阪万博(EXPO‘70)

執筆:営業統括 西山 正人

「大阪・関西万博」が4月13日から開催されています。
1970年に開催された「大阪万博」から55年の月日が流れたわけですが、当時小学3年生だった私の記憶は、かなりうっすらとした断片的なものでした。アメリカ館やソ連館などの未来的なデザイン、月の石、動く歩道、長い待ち行列等々…もはや本当の記憶なのか、そのあとのニュース、写真等で刷り込まれたものなのか定かではありませんでした。
万博記念公園にある「太陽の塔」が、耐震工事とあわせて、内部に展示されていた「生命の樹」や第4の顔である「地底の太陽」が復元され2018年3月から一般公開されました。当時私は関西に単身赴任しており、たまたまニュースで公開の事実を知りネット予約することができました。
当日、予約時間よりかなり早く到着してしまったため、どうしたものかと思案していると、なんと、記念公園にてご当地ラーメンが集結した「ラーメンEXPO」が開催されており、これもEXPOの縁だと気持ちを上げ、3種類のラーメンに舌鼓を打ち、少しビールを頂き、いざ「太陽の塔」へと臨んだのでした。

とにかく驚きました。その迫力にです。「太陽の塔」内部の展示空間には、鉄骨製で造られた高さ約41mの「生命の樹」があり、樹の幹や枝には大小さまざまな292体の生物模型群が取り付けられ、アメーバーなどの原生生物から爬虫類、恐竜、そして現在に至るまでの生命の進化の過程をあらわしています。岡本太郎氏の生命に対する尊敬と畏怖、進化と未来への思い、そういった魂が余すところなく感じられ、下から見上げた時の景色は神々しくその圧に小学3年生の少年の記憶がよみがえる気がしました。

「生命の樹」ですが、人類系統としては、クロマニヨン人で終わっていていわゆる「人間」は進化の先には登場していません。「人間」を頂点に置いていないのです。原生生物から脈々と進化を遂げてきた生命の樹から見れば「人間」の登場はほんの短い時間であり、生命の樹に掲げる生物としての資格を問うているのか、またあえて掲げないことで進化の意味を考えさせているのか、そんなことを考えてながら塔の中をゆっくりと降りてきました。
その時、少し記憶と現実との違和感がありました。記憶の中の塔は下から「エスカレーター」によって上がっていきましたが、現実は「階段」となっていたからです。説明員の方の解説によると今回の復元工事によって階段に変更されたとのことでした。また、現在の太陽の塔は単独で立っていますが、当時は建築家・丹下健三が設計した「大屋根」(幅108m・長さ291m)の中心を突き刺すように立っており、塔を上った人は塔の手にあたる部分から大屋根に出る導線だったようです。当時大屋根のあった「お祭り広場」は開・閉会式をはじめ各国のナショナルデー・スペシャルデーなど国際性豊かな多彩な催し物が連日繰り広げられた場所です。現在の「お祭り広場」も健在であり様々なイベントが繰り広げられており、(ラーメンEXPOもその一つだったのですが)広場の活況は一種のノスタルジーを感じてしまいます。

では、1970年はどのような時代だったのでしょう。1965年11月~1970年7月の57か月は「いざなぎ景気」と命名され、5年間で名目国民総生産(GNP)が2倍以上となり、1968年には西ドイツを抜き資本主義国第二位となりました。3C(新・三種の神器)といわれたカラーテレビ、クーラー、自動車が急速に普及し消費拡大に大いに寄与しました。まさに日本絶好調の時代です。ケンタッキー・フライドチキン1号店(名古屋)・マクドナルド1号店(銀座)などがオープンしファーストフード幕開けとなり、FM東京・大阪音楽FM・福岡FM音楽放送が本放送を開始、映画にもなったアポロ13号が打ち上げられました。一方、日本航空機よど号ハイジャック事件や三島由紀夫の割腹自殺など衝撃的事件も発生しております。当時の流行語が「三無主義」「しらける」だったことを考えると勢いだけの時代ではなかったのかもしれません。
また、現代では2025年問題として、5人に1人が後期高齢者(75歳以上)となっていますが、1970年では65歳以上の人口が約7%を超え高齢化社会への突入年とも言われています。既に高齢化社会という社会を予期しながらも、半世紀にわたり課題がさらに深刻化しているようです。

さて、「大阪万博」ですが当時の日本の人口は約1億370万人、大阪万博来場者は約6,420万人であり、なんとも驚くべき数字です。2010年上海万博(約7,300万人)までは、もっとも来場者を集めた博覧会でした。また、日本の家電・エレクトロニクス産業にとっても大きな転換期になったと言われております。展示物としてお目見えした、動く歩道・リニアモーターカー・エアドーム・電気自動車/自転車・電波時計・ワイヤレスフォン/テレビ電話・ウオッシュレット等々が万博を契機にして広がっていきました。また、食文化としてファーストフード・缶コーヒー・ブルガリアヨーグルト・インスタント食品・レトルト食品・チーズ・ワイン等が広がり、「大阪万博」はまさに日本の産業・文化に大きな影響を与えたビックイベントだったと言えます。
「大阪万博」で大いに盛り上がった日本ですが、翌年の1971年にニクソンショック、1973年にオイルショック(第4次中東戦争)という試練を受け成長に陰りがみえることとなります。昨今のトランプ関税ショック、中東問題他を抱える世界情勢を見るとまさに歴史は繰返す感があります。

2025年の「大阪・関西万博」ですが、テーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」を象徴するシンボルは「大屋根リング」です。直径約600メートル、全周は約2キロメートル、高さは20メートルと世界最大級の木造建築。京都の清水寺に代表される「貫(ぬき)工法」といわれる工法を基にした建築技術が用いられています。
木造建築と言えば、世界最古の木造建築である法隆寺は607年に建造されたと言われております。つまり、1,418年間立ち続けていることになりますが、最後の宮大工棟梁・故西岡常一氏によればヒノキの耐用年数は二千年、鉄は百年だそうで、木には大きな可能性があるのです。また、木造建築が環境配慮、低炭素排出、健康効果、経済メリット等で再評価されており、日本の伝統技術に支えられた先端技術が世界の建築をリードする時代が来るのかもしれません。
「大屋根リング」の内側には各国のパビリオンが配置され、全てを繋ぐ役割を果たしています。世界各国のそれぞれの歴史と文化を尊重しながら地球の一員として繋がっている。「多様でありながらひとつ」というコンセプトを体現しているそうです。

残念ながら、世界は分断が進み、悲惨な戦争が続く悲しい歴史を繰り返しています。万国博覧会は「技術が人を幸せにし、社会をゆたかにする」というメッセージがベースに流れていると聞いたことがあります。また、「次世代の人類の進歩」を示す道標にもなっているのでしょう。しかしながら太陽の塔の「生命の樹」が語る通り、人間は「進歩」はしても「進化」はしていないのではないかという疑問がつきまといます。人間はこれからも成長するであろう「生命の樹」の一員として誇れる立場でありたいものです。
「大阪・関西万博」が次の世代の子供たちに平和と夢を示す羅針盤となりますように、また世界の国の人々に生命の大切さを感じていただく貴重な場所となりますよう祈りたいと思います。

  • 大阪・関西万博は公益社団法人2025年日本国際博覧会協会の登録商標です。
  • ラーメンEXPOは株式会社シティライフNEWの登録商標です。
  • ケンタッキー・フライドチキンはケンタッキー フライドチキン インターナショナル ホールディングス リミテッド ライアビリティ カンパニーの登録商標です。
  • マクドナルドはマクドナルド インターナショナル プロパティー カンパニー リミテッドの登録商標です。
  • FM東京は株式会社エフエム東京の登録商標です。
  • 日本航空は日本航空株式会社の登録商標です。
  • ウオッシュレットはTOTO株式会社の登録商標です。
  • 清水寺は清水寺の登録商標です。

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