年末年始でグレートリセット
~日本人の年越し感覚を考える

執筆:役員室 上田 雅章

さてさて年末年始。2024年が終わり、2025年がやってきます。
年末年始は、我々日本人、日本社会において時の流れに大きな区切りをつけるマイルストーンです。
今回は、年末で物事にけりをつけ、新年をめでたいと祝う日本人のメンタリティとその背景を考えてみました。

正月を祝うのは、東アジア・東南アジアの文化

農耕文明を持つ東アジア・東南アジアの各国・地域では、概ね立春のころを旧暦の1月としていました。今はこれを旧正月と呼んでいます。冬を耐え凌ぎ、ようやく農作業を始められる直前の頃を新年とし、農耕年の始まりに感謝し、豊作に向け家族・地域の団結を確認する行事がお正月のお祝いであったのだと考えられています。
正月を祝う文化は、中国、そして中国歴を採用していた日本、韓国、台湾、ベトナムに共通の文化であり、またシンガポール、マレーシアなど華人(中国系住民)の多い国や地域でも同様です。

欧米では、New Year's Dayは単なる祝日

欧米でも新年1月1日はNew Year's Dayとして祝日です。
クリスマスが終わると年末でも「Happy New Year!」と言葉を交わします。その意味は、
“I wish you a Happy New Year!” または“Have a Happy New Year!”
我々日本人が年末に使う「良いお年を」と相手の“未来”を願う挨拶です。
そして、大晦日12月31日に時計が進み1月1日の午前0時になった瞬間は、「Happy New Year!」「新年になったね!」と言い合いますが、そこまで。1月1日の朝になるともうこの挨拶は使いません。1月1日は祝日で学校や職場は休みとなりますが、1月2日からは平日です。
新年、元旦、正月が“めでたい”と言う日本人のような感覚はほぼないようです。

“あけましておめでとう”はグレートリセットの成功祝い?

日本人にとっての“あけましておめでとう”、故事来歴はいろいろありますが概ね「無事に新年を迎えられ、良かったですね」と言う祝辞で、松の内(1月7日または15日まで)に使う年頭のあいさつです。
しかしなぜ無事に年末を乗り越えたことを喜び、祝うのでしょう。

以前、某公共放送の5才の女の子が「ボーっと生きてんじゃねーよ」と言う番組で、年末を“年の瀬”と表現した理由が解説されました。
江戸時代にはモノの購買はツケ払い(後払い)が一般的。そしてこのツケ(=借金)の清算期限は、夏のお盆と年末大晦日であったとのこと。年末にツケの清算が行われないと期限は一旦リセットされ、次の期限は半年後のお盆。
取り立てる側は、豊かに新年を迎えるために借金を取り立てたい。また借りた方は、何とかツケを払う金策をするか、お金が無い・足りない場合には逃げ隠れするか。この年末の取り立て・清算を乗り越えるためには、貸方・借方の双方、まるで川の急流・瀬を渡るような奮闘努力が必要と言うことから、“年末=年の瀬”と表現されたそうです。
こうなると、年の瀬の経済問題を乗り切りグレートリセットに成功した新年は、確かにめでたい!

年末のリセットに拍車をかける煤払い、大掃除

そして我々日本人は新年を迎えるにあたり、年末の5S:「整理」、「整頓」、「清掃」、「清潔」、「躾(しつけ)」を重視します。
古来日本人は、新年には各家々に年神様をお迎えし、福を授かると考えていました。この大切な神様をお迎えするために、普段の掃除とはレベルの違う大掃除を行ってきました。清らかに新年を祝うために、年末には古くは煤払い、最近では年末大掃除と称して、大掛かりな清掃、整理整頓をしようとします。できなくてもせねばと、少しは考え、時には焦ります。
この感覚は、今でも社会に根強く残っています。
そして掃除され、清く磨き上げられた各家、建物のファサード(建物の正面・玄関)には、神様を迎える目印としてしめ縄や門松を掲げるという躾(礼儀作法)でそのリセット感を高めます。

このような歴史的背景も含め、我々日本人には年末に何かを清算した結果、めでたい新年がやってくるという独特の社会的な“年越し”感覚が形成されているのではないでしょうか。

やった感があるからウマい祝い酒

日本の風土、これから生まれた文化・風習で育った私としては、やはり年末になると大掃除が気にかかります。
我が家の年末大掃除では、妻の作る分担表に従い、私は天井照明の清掃、窓の網戸洗浄などの高所・大物を担当します。
そしてこれをやり遂げた達成感は、紅白を見ながらの年越しビールにウイスキー、そして新年の祝い酒をより一層美味しくし、おめでた感を醸成します。

ずいぶん前、忙しい年末12月25日にギックリ腰をやってしまったことがありました。その年だけは家族大掃除の分担を免除されたのですが、“年末の役立たず”と言うレッテルは私を大いにへこませました。
腰の痛みも大晦日あたりには引いたのですが、お正月のお酒が例年になくほろ苦かったことを思い出します。
でも、量と種類はいつも通りだったと、妻は呆れていましたけど…。

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