クリスマス、ハロウィン、バレンタインデーは、もはや日本文化?
~舶来イベントについて考える

執筆:役員室 上田 雅章

今年も残すところあと一か月と少々。12月に入ると街にはクリスマスムードが溢れます。
舶来の行事であるクリスマスは1950年代・高度成長のころにいち早く定着していました。さらに1980年代・バブルで開花したバレンタインデー、そして21世紀に少し遅れてやってきたハロウィン。我々日本人は、欧米渡来の行事を日本風に解釈し、日本流に楽しんでいます。皆さんもそれぞれのイベントに様々な思い出があるのでは。
そこで今回は、我々日本人、日本社会がいかに舶来イベントを日本風にアレンジしてきたかを、私の個人的な思い出を通して考えてみました。

バレンタインデー、知ったきっかけはチョコより苦い

1970年台に中学生になった私、何分そういう方面には疎く、バレンタインデーを知りませんでした。 そんな頃、行事も少ない2月のある日、一つの噂が下校前、掃除時間のクラスにもたらされます。学年のある男子に、隣の中学の女子がチョコらしきものを渡すところが目撃されたと。念のためですが、私ではありません。
クラスの女子達は、その学年一のイケメン君と仲の良い私に、“聞け、聞け”と迫ります。拒んだのですがあまりにしつこいので、竹ぼうきで裏庭を掃いていた友人に声を掛けました。
「誰かにチョコもらったの?」。彼は落ち葉をつつきながら、「ああ、幼稚園で一緒の子でね。でも受け取らなかったよ」と返します。私は、「だよね、誕生日じゃあるまいし。でも、もったいなかったな」と納得しその場を収めました。
これを女子達に報告すると、「うぉ~」とどよめきが起こり、いち早く駆け出す女子も。顛末は瞬く間に学年中を駆け巡りました。
一方で私の“誕生日じゃあるまいし”、“もったいない”に女子達はブチ切れ。“バレンタインデーとチョコレート”について、トクトクと説教されました。最後に女子達から、“一生無理ね”と捨て台詞までいただく始末。

時は流れて社会人となった1980年台、バブルに向かうこの頃、日本社会特有のバレンタインデーにチョコを贈るという行事は進化します。義理チョコと言う不思議な風習が生まれ、おかげ様で私もチョコをいただくことができました。

ハロウィンは遅れてやってきた

日本でのハロウィンの認知や浸透には時間がかかりました。流行り出したのは2000年になるころからでしょうか。某テーマパークの季節イベント・パレードが周知のきっかけのようです。

ハロウィンは欧米では伝統ある秋の行事。私は1980年の中頃、米国に駐在したときに知りました。
毎朝の車通勤で使うフリーウエーから見える丘の上の大きな貯水タンク。9月下旬、この薄黄色のタンクに大きな黒い目・口・鼻の模様が貼り付けられました。
米国人の同僚に「あれ何?」と聞いて初めてハロウィンを知り、街に溢れ始めたカボチャのランタンを認識しました。

10月下旬の金曜のカジュアルデー(隔週金曜の軽装での勤務日)には、社員の一部が仮装して出勤してきます。
皆さん自作するそうで、黒のランニングウエアに骸骨模様を張り付けた経理マンや、凝った手縫いの魔女の衣装を纏った営業ウーマンが社内を闊歩します。昼休みには食堂で社員クラブ主催の優秀仮装者の表彰式が開催されました。
(写真は1985年ごろ、オフィスでのハロウィン仮装の様子)

そして10月31日の夕方、我が家のアパートのドアもノックされ、顔見知りの近所の子供たちが「トリック オア トリート」と、可愛い魔女やお茶目なデビルの扮装でやってきました。妻が日本のクッキーやチョコを子袋に入れて渡したことを懐かしく思い出します。ちなみに、この日本のクッキーやチョコは、個包装、甘さ控えめで、子供たちの米国人のご両親達から絶賛されたそうです。

子供のころ、クリスマスは旧暦だった

クリスマスは私が物心ついたころにはすでに日本の年末イベントとして定着していました。 私の育った地方の田舎町の商店街には洋菓子店もベーカリーもありませんでしたが、この時期になると和菓子屋のショーケースの大福餅やおはぎの横に、バタークリームのクリスマスケーキが並びます。
そして我が家には、12月26日にこの和菓子屋から一番大きなクリスマスケーキが届くのです。
友人の家では12月24日や25日にケーキを頂くそうなのですが、我が家は26日。待ち遠しかったです。
小学生になり、友達の家との日の違いに気が付き聞く私に、父は、「うちは仏教だから旧暦。だからちょっと遅れるんだ」と苦笑いしながら言い訳しました。
小学校高学年になり、物知りな友人から「25日を過ぎるとケーキは大安売りになる」と聞くまで、私は我が家のクリスマスは旧暦であると信じ込んでいました。

舶来イベントをうまく生活に取り込む、ただし節度を持って

それぞれの行事の来歴はいろいろありますが、日本人は本当に都合よく解釈し取り込んできました。
クリスマスは、日本人の年末でリセットと言う感覚を盛り上げるのに一役買います。バレンタインデーは、恋愛にためらいがちな日本人に、一歩踏み出す勇気と大義名分をもたらしているとも考えられます。
一方、遅れてやってきたハロウィンは、花見やお祭り好きにもかかわらず古い風習に気後れしていた若者に対して、コスプレという時代の風潮を重ね、街に繰り出す口実を演出したのではないでしょうか。結果的に路上飲酒に憬れる海外の方々まで誘引し、かなり混乱。挙句の果てに、路上飲酒禁止、来ないで運動となり、今年は落ち着きを取り戻したようです。

舶来の行事について、日本の祝い方は本来の趣旨とは異なるなどと目くじらを立てても始まりません。気持ちを前向きにするこれらの行事をうまく生活に取り込み、節度は保ちつつも社会、経済を回すのも一考かなと日和見主義の私は考えます。
そしてそれぞれのイベントごとに、美味しいお酒を準備万端、楽しむことは言うまでもありません。

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