パリオリンピック2024
~オリンピックに重ねて、瑠璃色の地球に思いを巡らせる~
2024年7月25日
執筆:役員室 上田 雅章
2024年パリオリンピックの開催です。
前回2020年東京大会が、新型コロナ禍で一年遅れ2021年の開催になったため、あっという間のパリ五輪です。
四年ごとに開催されるオリンピックは、その時々の世界・社会を反映し、人に様々な記憶を残します。
その一例として、私のオリンピックに関連する思い出を少し振り返ってみました。
1964年 東京: “ブルーインパルスの5色の飛行機雲”とカラーテレビ
この時私は幼稚園児で、競技についての記憶がほとんどありません。
それでも鮮明に覚えているのが、開会式の空に描かれたオリンピックマーク。
航空自衛隊の曲技飛行チーム“ブルーインパルス”が雲一つない青空に5色のスモークで5つの輪を重ねて描きました。
この光景は、当時普及しはじめたカラーテレビの映像で全国にリアルタイムで届けられました。
この頃我が家にはカラーテレビはまだなく、私は白黒テレビで見ましたが、真っ青な空に見事に描きあげられた五色の輪をしっかり記憶しています。
美しい思い出は天然色です。
そしてこの後、日本のカラーテレビが世界を席巻して行きます。それが今や、過去の栄光となるなんて・・・。
1972年 ミュンヘン:“月面宙返り”で歓喜した先の“黒い9月事件”
体操鉄棒で金メダルを獲得した塚原光男さんの決め技“月面宙返り/ムーンサルト”。
当時米国アポロ計画の宇宙飛行士が、低重力の月面で飛び跳ねる姿が配信されており、塚原さんが難しいひねり技でフワリと月面の宇宙飛行士のように着地する姿は圧巻でした。
当時、平凡な私たち中学生も校庭の鉄棒にぶら下がり、手を放す際に体を少しだけよじり、その程度を競ったものです。
50年たって今、各国は再び“月”を目指しています。
しかし、興奮冷めやらぬ競技日程の後半、平和の祭典であるはずのオリンピックに影を落とす大事件が発生します。
9月5日、選手村にパレスチナ武装組織「黒い九月」のメンバーが侵入し、イスラエルの選手・コーチ11名を殺害。
19世紀末に始まる近代オリンピックは、ギリシャで紀元前に開催されていた古代オリンピックの平和の精神、“大会のためには戦争も休戦する”という理念を込め、グローバル化する世界を結ぶ平和の祭典として創設されました。
しかし同時期、人とともに世界を巡り始めたモノと金が20世紀の世界を地域紛争、民族紛争、世界大戦に巻き込みます。この事件は平和がなんと脆く儚いものかという、今にも続く文明の悪癖をまざまざと見せつけました。
当時中学の社会の先生が、“バルフォア宣言”などの第一次世界大戦(1914~17年)前後に仕込まれた中東紛争の火種と矛盾について解説してくれたことを思い出します。
1984年 ロサンゼルス:“商業五輪”の成功と“アスリートファースト”の矛盾
この頃のオリンピックは、過大な税金投入、政治介入、アマチュアリズムの限界など多くの課題に直面。ロサンゼルス大会も地元では賛否両論が渦巻いていました。
当時私は偶然ロサンゼルスに駐在していましたが、米国人の同僚は開催前、「アマチュアの大会などつまらん。金の無駄」と興味を全く持っていません。ところが開会式と同時に空気が一変、米国中が歓喜と感動に包まれてゆきます。
例の同僚も、「体操のチケットを手に入れた、絶対見に行く」とホクホク顔。
大会組織委員長に就任したピーター・ユベロフ氏は企業経営者出身で、ビジネス視点でオリンピックを運営するという発想転換で大会を経済的にも成功させ、終わってしまえば400億円の黒字。オリンピックの商業化が加速します。
一方この大会では、商業化によるアスリートへのしわ寄せが顕在化。
この大会から正式競技となった女子マラソンは、8月5日・日曜日、午前8時スタート。私はマリナ・デルレイと言うヨットハーバーの脇、15キロ地点あたりで観戦していましたが、朝から暑く、選手にはたいへん過酷。
スイスのガブリエラ・アンデルセンさんが熱中症で朦朧としながらゴールするシーンを思い出します。
莫大なスポンサー料や放送権料を拠出する企業の都合に合わせ開催時期や競技時間が設定される。今に続く商業主義とアスリートファーストの矛盾です。
競技によっては開始時間を早朝/夕方・夜にしたり、競技場所を冷涼な別の都市に移したりなどの対応がとられます。
皆さんご記憶の通り、2020年東京オリンピックのマラソンと競歩は札幌で開催され、マラソンのスタート時間は女子は午前6時、男子は午前7時でした。
さてますます進む地球温暖化、沸騰化の中で、この付け焼刃のアスリートファーストをどう整合させてゆくのか・・・。
2020(2021)年 東京:混乱、“無観客”でも“おもてなし”の日本を情報発信
“オ、モ、テ、ナ、シ”で東京開催が決定した時には国中が歓喜しましたが、開催まで、さらには開催後にも多くのごたごたがありました。しかも新型コロナによる前代未聞の一年遅れの開催。
感染症対策が継続するとんでもない混乱の中、それでも大会関係者の奮闘、ボランティアの方々もおもてなしで、全ての競技を無事完遂することができました。これは世界に誇れます。
無観客ではありましたが、この大会での“日本”にかかわる情報発信が、その後のコロナ明けのインバウンドにつながっていると考えます。
オマケの思い出:1964年“東京五輪音頭”で、泣かす!?
1964年の東京五輪の思い出としてもう一つ、耳から離れないのが幼稚園の運動会で輪になって歌いながら踊った「東京五輪音頭」。
この歌のサビは「オリンピックの顔と顔~、ソレ トトント トトント顔と顔~」なのですが、我々悪ガキ園児はわざと「ソレ ドドンパ ドドンパ~」と歌います。当時渡辺マリさんの“東京ドドンパ娘”と言う歌謡曲が流行っていました。
練習で何度注意されても“ドドンパ ドドンパ~”と歌うので、とうとう担任の先生が泣き出してしまいました。
ちょっと、しょっぱい思い出です。
さてパリ五輪。
世界は一層混沌としています。そのような時代であるからこそ、“平和の祭典”で感動したいと考えます。
時差でライブ観戦はつらいですが、瑠璃色の地球を実感しながら・・・。
- オリンピックは公益財団法人日本オリンピック委員会の登録商標です。
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