お酒、その芳醇の起源とテロワール&マリアージュを考える

執筆:役員室 上田 雅章

秋深し、お酒がますます美味しい季節となりました。
こう言うと、「あなたは一年中、お酒がまずいと言ったことがないでしょ!」と突っ込まれますが・・・。
そこで今回は、私が大好きなお酒の不思議について考えてみました。

如何にして酒はできるか

酒の起源を調べはじめましたが、その前に酒ができる原理をおさらいする必要がありました。
酒は、食物中の酵母が分解するアルコール発酵により作られます。酵母は酵母菌として自然界に存在します。
果実などに含まれる糖を発酵させるとワインなどができます。一方、日本酒、ビールなどは、米、小麦などの"デンプン"を麦芽などの"酵素"の力で糖に変え、その糖を酵母で発酵させます。
発酵には数週間から数か月以上かかり、“醸造酒”が出来上がります。
この醸造酒を蒸留しアルコール度数を高めて作るのがウイスキー、焼酎などの“蒸留酒”。蒸留には高度な技術が必要です。

それでは、人はどうやって最初の酒を獲得したのでしょう。諸説ありますが、いくつかの可能性をご紹介します。

酒の起源説:その1

旧石器時代(1万年以上前)までの我々の祖先は、狩猟・採取の遊動生活。食物は獲得しても、十分な加工や発酵を待つ時間的余裕がなく、酒は造れなかったと想像します。
しかし人類は偶然にも、天然に醸された“酒”に出会っていたと考えられています。これがなんと“蜂蜜酒”。
蜂蜜は糖度が高すぎ、そのままでは発酵も腐敗もしません。しかし熊などが蜂の巣を破壊し、食べ残された蜂蜜が雨水で薄まり、空気中の酵母が混ざり発酵。この自然発生的な原始の酒を人が偶然見つけた、そんな想像がなされています。
我々の祖先はこの不思議な水に魅了されます。甘いだけでなく、酔えて、ストレスを解消し、楽しくなる。この価値のある水をもっと作れないかと考えたはずです。
やがて人が遊動生活から農耕・牧畜の定住生活に移行するにつれて、天然の蜂蜜酒を観察しながら試行錯誤を行い、蜂蜜酒が製造できるようになったと考えられます。蜂蜜酒は今でも世界各地で作られています。

酒の起源説:その2

これに対して果実、穀物は糖度が低く腐敗もするため、天然の酒は生成され難かったようです。
それでも今からおおよそ1万年前くらいからの新石器時代、人は農耕・牧畜で定住し始め、食物を貯蔵し加工・調理するようになります。好奇心ある人が食物の変化を観察し、共に微生物の作用である発酵と腐敗の違いを見分ける。そして酒を生む発酵菌を活かす方法を見つけ、酒の醸造が始まったと考えられています。

いずれの説も、土地への定住酒を醸す余裕を生みだしたというわけです。

テロワール、マリアージュ

こうして人類は、その土地の生活に根ざした様々な酒を作り出したことでしょう。今作られるその地域を代表する酒は、人が自然と対峙し紡いできた“文明の産物”であり、その土地で醸し出された豊かな“文化の精華”だと考えます。

ワインの分野で使われる“テロワール(terroir)”という言葉。ブドウの生育や醸造プロセスに影響する、地理、地勢、気候など、その地域の特徴を表します。どの酒もその土地のテロワールにより産み出され、工夫を重ね熟成してきました。
さらに酒と食べ物の良い組み合わせを意味する“マリアージュ(mariage)”。酒はその土地の食物と深く結びつき、互いのおいしさを高めてきました。

今や酒、そして酒と食べ物の組合せはグローバル。お好み焼にはビールがメッチャ合いますし、和食に合うワイン、日本酒をフランス料理に合わせるなど、地球規模で新しいマリアージュがどんどん増えて行きます。

ウイスキーがお好きです

最後に私の好きなウイスキーについて、ほんのひとさわり。
度数と香りの高いウイスキー、基本は食後酒。最近はハイボール/ソーダ割が食事中に飲まれるようになりましたが。
そんなウイスキーを食事に合わせる由緒ある一品が、“牡蠣のウイスキーディップ”。
海水で洗い殻に載せた新鮮な生牡蠣に、ストレートのウイスキーをびしゃがけし、一口でほおばる。これこそ究極のオイスターシューターです。
村上春樹さんのエッセイにもありますが、イギリス、スコットランドの“アイラ島”はウイスキーの名産地。彼の地の漁師さんたちは、漁から戻ると、港の食堂でクイッと牡蠣のウイスキーディップを流し込み、漁獲を自慢しあうのだそうです。
潮風で醸されたアイラウイスキーとミネラルたっぷりの海で育った牡蠣のテロワール&マリアージュ。あぁ~、いつかは行きたいなぁ、アイラ島・・・。

皆さんは、どんなふうにお酒が好きですか?
さてかくいう私、お酒が好きなのか、お酒で酔うのが好きなのか・・・。答えを見つけるためには、引続き研鑽を重ねねば、と改めて思った次第です。

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