「郷土料理」よもやま話 ~「郷土料理」SDGsへの道~
2021年9月24日
執筆:役員室 山口 卓
今年の夏も色々ありました。オリ・パラ東京大会のかたわらで、緊急事態宣言で故郷への里帰りを今年も見合わせたと言う方も多くいらっしゃったのではと思います。「実家の味、故郷の味をゆっくりくつろいで・・」なんて楽しみにしておられた方もきっと大勢いらっしゃったでしょう。
そこで今回は、食欲の秋を迎えるにあたり、「郷土料理」にまつわるコラムとしました。
皆さん、「郷土料理」と言う言葉で何を思い浮かべられますか?
郷土料理 とは、各地域の産物を上手に活用して、風土にあった食べ物として作られ、食べられてきました料理を言います。そして歴史や文化、あるいは食生活とともに受けつがれています。(※1)
郷土料理の基本は「地産地消」。北海道:石狩鍋、東京:深川めし、山梨:ほうとう、高知:皿鉢(さわち)料理、広島:かきめし、沖縄:ゴーヤーチャンプルー・・。聞いただけで食欲をそそられますね。日本は、山海の幸に恵まれていながら長らく鎖国で他国との交流が無く、独自の料理の発達が促されたと言われています。
「郷土料理」って「お国名物」だと思いませんか?実はこの言葉、日中戦争拡大下の1940年に、時の政府によって、食糧不足解決のために食材、料理の加工を見直すべく広められた言葉のようです。「郷土食」とも呼ばれ、「地産地消」の名のもと、食品輸入を抑制し、銃後の国内で主食のコメの消費節約を意図した戦時体制料理が言葉のスタートとの事です。節米活動でコメを戦地の兵隊さんに沢山送りたかったのでしょうね。でも郷土料理が戦争に関係しているとは意外です。
そんな影響なのか、今は考えにくいですが、かつては、民宿などで郷土料理が出されると、「田舎料理ですが・・。」なんて謙遜された事も有ったとか。その名残がしばらく有ったのでしょう。
時代は変わり、戦後日本は高度経済成長を遂げました。それと共に食の欧米化、更にはバブル期以降のグルメブームで日本人の伝統的な和食のスタイルが崩れ、郷土料理ともども日本から「日本の食文化」が消えつつありました。その結果、国民は生活習慣病対策が必要となり、また、一方で、農山漁村の過疎化など地域振興が必要となりました。
その危機感から2007年に政府は、農山漁村の活性化を狙いとして「農山漁村の料理百選」を選定、再び郷土料理に脚光が当たりました。
また、2013年には日本の食文化を保護する目的で「和食;日本人の伝統的な食文化」をユネスコ無形文化遺産に申請し、登録されました。これによって「和食・郷土料理」の良さが見直され、例えば学校給食メニューにもヘルシーな郷土料理が取り入れられるなど、国を挙げて郷土料理PRが行われています。
そして直近では、郷土料理が国際的な人類の課題、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な17の開発目標)の観点で世界に登場です。
「郷土料理」のキーワード「地産地消」は、SDGsの17の目標の内、「作る責任、使う責任(目標12)」に適合します。「地産地消」で輸送エネルギーを削減して気候変動対策に貢献、その上で地元の生産者の収入を上げる地域活性化にも繋がる「エシカル(倫理的)消費」のモデルが評価されています。郷土料理のモデルが日本だけでなく、グローバルで広まり、サステナブル社会実現に貢献して行くと良いですね。
「戦時食 地域振興 SDGs、 郷土料理が 七変化」。郷土料理も意外と数奇な歴史を辿っています。日本各地では、日々郷土料理の発展に努力されている方々が大勢いらっしゃいます。皆さん、テレビでやっているからと言って、郷土料理の大食い競争などは厳に慎みましょうね。
※1:農水省ホームページ
【参考文献】
・全国高等女学校長(編)『全日本郷土料理』(一九四〇年)─戦時の食や郷土食に関する文献研究のために─
立命館大学教授 南 直人著
・和食の真髄 ユネスコ無形文化遺産に登録された本当の理由
静岡文化芸術大学学長 熊倉 功夫著
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