三井金属鉱業株式会社様

ネットワークカメラ用録画・配信サーバー「ネカ録」導入事例

工場設備の稼働データとカメラ映像を連動した監視システムを構築し、業務の効率化と工場内の安全管理を実現

「マテリアルの知恵を活かす」をコーポレートスローガンに、非鉄金属素材の分野で産業を支える三井金属鉱業株式会社。機能材料事業本部 銅箔事業部では、工場の安全管理・生産性向上に向けて、三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社(MIND)のネットワークカメラ用録画・配信サーバー「ネカ録」を導入し、三菱電機ソフトウエア株式会社(MESW)のPLCのデータ収集ソフト「Miranda」と連携した監視システムを構築しました。製造現場のDXを実現したこの取り組みは、他の製造ラインなど横展開・拡大をしようとしています。

三井金属鉱業株式会社様

機能材料事業本部 銅箔事業部
上尾事業所 製造課
テクノロジーイノベーション担当
主査
三浦 幸一 氏

機能材料事業本部 銅箔事業部
上尾事業所 製造課
テクノロジーイノベーション担当
大西 伸明 氏

導入背景

工場の生産性向上、省力化に向けてカメラ映像を用いた監視システムを検討

2024年に創業150周年を迎える三井金属鉱業は、非鉄金属素材の分野において、機能材料、金属、モビリティ、その他の4領域等で事業を展開しています。機能材料事業本部で中核となる銅箔事業部では、プリント基板用電解銅箔や、プリント配線板内蔵用キャパシタ材料などの製造を手掛けています。

銅箔事業部の基幹工場である埼玉県の上尾事業所では、早くからデジタルトランスフォーメーション(DX)による工場の生産性向上、工程管理の省力化に取り組んできました。そのひとつが廃液処理の監視業務です。

電解銅箔の製造では、排水処理の過程で沈降分離などの方法を用いて排水基準に基づき処理してから排出します。この処理工程では、凝固剤の効果を高めるために廃液のpHをアルカリ性に維持しておく必要があります。pHの数値情報は、処理工程の各所に設置したセンサーで計測しているものの、工場の担当者が巡回して進行状況を目視で確認していました。製造課 テクノロジーイノベーション担当 主査の三浦幸一氏は次のように語ります。

「工場は24時間365日、交代勤務で稼働しています。現場の作業員が多頻度で目視巡回で確認することは効率が悪く、担当者の経験値によっても判断のばらつきが懸念されます。そこでセンサーで取得しているpHなどのデータと映像を関連付けて、処理の状態が把握できるシステムの導入を検討しました」

選定ポイント

廃液処理の監視業務において目視巡回頻度を従来の3分の1に

課題解決に向けて、同事業所はセンサーのデータと映像データを関連付けて「見える化」ができるシステムとして、MINDの「ネカ録」とMESWの「Miranda」を選定しました。

「採用の決め手は、ネカ録とMirandaの連携によりカメラの映像データと制御データを同期して確認ができることと、複数台のカメラの映像を一元的に管理できることにありました」(三浦氏)

採用決定後、2018年4月頃から導入を開始し、2019年3月に本稼働を開始しました。導入時は、カメラの設置位置なども工夫し、確実に映像データが取得できるようにしました。

導入後は、複数台のカメラの映像を、事務所や工場に設置した大型モニターで確認するだけでよくなり、業務が大幅に効率化されました。カメラ映像は約1週間分が録画され、トラブルがあった際は、センサーで取得したpHデータと合わせて原因を確かめることができます。

「不測の事態があった時に適切に対処ができる安心感が得られたのは大きな効果です。作業員による巡回の頻度も従来の3分の1に減り、現場の作業効率向上に貢献しています」(三浦氏))

導入効果

銅箔製造ラインの不良発生分析や作業者の安全管理にも活用

上尾工場は、次のステップとして銅箔の製造ラインにおける工程監視や安全管理に活用することにしました。製造課 テクノロジーイノベーション担当の大西伸明氏は次のように語ります。

「銅箔厚みの薄膜化・低粗度化により、微細な品質不良に対するお客様の品質要望も高まっています。これまでは、電解液の流量や温度、メッキ処理の電流値などの情報をセンサーで取得し、それらの変化を見ながら製造不良の原因を調査していました。しかし、それだけでは装置の不具合によるものなのか、作業員のオペレーションミスによるものなのか、あるいはその他の外的要因によるものなのか判断できません。そこで、ネカ録とMirandaを使った監視システムを製造ラインに導入することにしました」

システム導入時には、様々な問題への対処も必要だったといいます。

「カメラの設置場所や画角の調整には苦労しました。また、既設メーカーのPLCとの連携実績が少なかったため、通信設定などで工夫が必要でしたが、代理店の西山電気株式会社とベンダーの手厚い支援によって無事導入することができました。」(大西氏)

導入に際しては、工場長が現場の作業担当者に監視目的ではなく、工程管理や安全管理が目的であることを伝えることで理解を得て、作業員が気分よく働けるように配慮しています。また、現場に大型モニターを設置して、作業員が自分たちで映像を見られるようにしたことで、納得してもらいました。

現在は、銅箔製造ラインにカメラ6台を設置し、作業員のオペレーションが確認できる範囲を撮影しながら、約1ヵ月分の映像を録画保存しています。本稼働から半年が経過した現在、オペレーションミスや外的要因による不良品や、作業員の危険行為による事故などは発生していません。そのため、ネカ録やMirandaで原因を追究する機会はありませんが、万が一の問題発生時に、ありのまま様子が確認でき、有効な再発防止策が打てる事を期待しています。

「他にもカメラで撮影することのメリットが出てきており、外部の保全業者などが工場内で作業する際、業者の作業状況を遠隔でチェックができるようになったことで、効率化等の導入効果を実感しているようです」(大西氏)

今後の展望

製造現場のDXに活用し社員が安心安全で働ける工場へ

上尾工場では、今後も監視システムを他の廃液処理のラインや製造ラインに横展開していく計画で、まずは上尾工場内の複数の製造ラインに監視システムを導入する予定です。上尾工場の実績を耳にしたり、実際に見学をしたりした他地域の工場もネカ録とMirandaを使った監視システムに関心を寄せており、他事業での検討を開始しているといいます。

さらに将来的には、映像解析技術を使った安全管理など、最新のデジタル技術を活用して上尾工場のDXを進めていく計画です。

「三菱電機のAI技術を使ってカメラ映像から人の骨格情報を抽出・分析し、特定の動作を自動検出する『骨紋』のデモを見せていただきました。上尾工場がDXの推進役となるために、新たな技術にも挑戦してみたいと思います。さらには、社員が働きがいのある工場を目指し、デジタル技術を活用した安心安全な職場作りに取り組んでいきます」

三井金属鉱業は、「探索精神と多様な技術の融合で地球を笑顔にする」をパーパスに、マテリアルの知恵で未来に貢献する事業創発カンパニーを目指していきます。