独立行政法人国際協力機構 東京国際センター様

ネットワーク構築・運用サービス導入事例

大規模無線LAN環境によるおもてなしで海外から訪れる研修員の満足度を向上。同時に運用負荷削減も実現

独立行政法人国際協力機構(JICA)の活動拠点のひとつであるJICA東京国際センター(JICA東京)は、既存のネットワーク機器のサポート終了を機に、三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社(MIND)をパートナーに大規模無線LANの新規構築およびLANの更改を実施しました。無線LAN環境の構築によって海外各地から年間約4,000名が訪れる研修員に対して、自由に使えるインターネット環境の提供による行き届いたおもてなしを実現。LAN環境の刷新により、管理性を高めるとともに障害時の作業負荷を軽減しています。

独立行政法人国際協力機構 東京国際センター様

総務課
外崎 伸明 氏

ヘルプデスク
川口 卓也 氏

ヘルプデスク
竹田 俊彦 氏

導入背景

利用者のニーズに応えるためネットワークの再構築を決定

日本の政府開発援助(ODA)を一元的に実施する機関として、開発途上国の国づくりを支えているJICA。全国に10ヵ所あるJICAの国際センターのひとつであるJICA東京は、海外からの研修員受入事業、海外ボランティア派遣、草の根技術協力などの事業を展開しています。研修員受入事業では、120ヵ国以上の開発途上国から、年間約4,000人の技術研修員を受け入れ、経済政策・ガバナンス、保健医療、運輸交通、環境管理など年間480コースの研修を実施しています。東京都渋谷区にあるJICA東京の施設には、事務室のほか、研修員のためのセミナー室と宿泊施設を用意。441室ある宿泊施設は、年間延べ7万人が利用しています。研修員の滞在期間は平均で約1ヵ月、研修員によっては3ヵ月、1年、2年と長期に及ぶ場合もあります。

JICA東京は、10数年前に構築した有線LANのネットワーク機器のサポート終了が迫ったことから、ネットワーク環境の見直しを開始しました。ヘルプデスクの竹田俊彦氏は「従来のLANは、ネットワーク機器のパラメーター情報などが詳細に管理されておらず、障害時にその都度機器を確認する必要があり、復旧までに時間と手間を要していました」と振り返ります。

また、無線LAN環境の構築も喫緊の課題でした。総務課の外崎伸明氏は次のように話します。

「スマートフォンの急速な普及により、無線LAN環境の構築は研修員からの要望の中でも優先度が高いものでした。特にインフラ環境が整備されていない国では有線LANより無線LANが普及しているため、無線LANが使えないために、海外から訪れる研修員を落胆させてしまうことが何度もありました。また、無線LANを導入することでJICA東京の職員も施設内でPCを持ち歩くことが可能になるため、執務時のペーパーレス化や業務の効率化が推進できると考えました」

選定ポイント

大規模ネットワークをスケジュール通りに構築

無線LANの新規導入とLANの更改は、2016年5月に公示し、同年7月の入札によりMINDを構築ベンダーに選定しました。その評価について外崎氏は次のように語ります。

「最終的にコスト面なども含めた総合点で決定しましたが、その中で特徴的だったのがMINDの技術点です。他社を圧倒していました。具体的には大規模なネットワーク環境を構築するために、週1回の定例会の実施、スケジュール管理、報告体制など大規模ネットワーク構築の実績を踏まえたきめ細かい内容が記載されており、とても安心感がありました」

LANの構築作業は2016年8月から着手し、現地調査、設計、備品発注、配線工事などを経て2017年3月に新たなLAN環境に切り替えました。導入期間は8ヵ月で、スケジュール通りに完了することができました。

JICA東京の新たなネットワークは、有線LANについては、従来L2スイッチで構成していたネットワークをL3コアスイッチ中心に構成し、L3コアスイッチとL2スイッチ間の接続をリンクアグリゲーションによってループフリーに冗長化しています。また、基幹スイッチであるコアスイッチとディストリビューションスイッチはスタック構成を取り、機器レベルでも冗長化を図り、障害時でもネットワークが切断されない環境を構築しました。さらに、それまで執務室内などで数珠つなぎ化していた既存L2スイッチは、新たに設置したハブボックス内のL2スイッチに集約することでネットワークトポロジーを簡素化し運用負荷の軽減を図りました。インターネット回線は、統合脅威管理装置(UTM)を設置してセキュリティー対策を施すとともに、研修用で1回線、宿泊用で10回線あったインターネット回線を1Gの高速回線1本に集約しました。

無線LANについては、アクセスポイントを本館、宿泊棟、別館にそれぞれ設置。アクセスポイントの数は合計104台、うち10階建ての宿泊棟には各フロアに約8台、合わせて約80台を設置。無線LANの認証は、職員用の無線LANはPCを限定したクライアント証明書認証、研修員用の無線LANについては日々変更されるIDとパスワードによるWeb認証を採用。職員用と拠点利用者用のネットワークは物理的に分割。拠点利用者の中でも研修員用と宿泊者用のネットワークは論理分割して、相互の通信ができないようにセキュリティーを確保しています。

ヘルプデスクの川口卓也氏は「実際の現場では、LANの差し込み口やケーブルの本数などが、仕様書と異なることがよくありますが、MINDは現場の状況を確認しながら臨機応変に対応していただきました。例えば、ヘルプデスクの業務として宿泊者から7階の○号室でインターネットに接続できないと問い合わせがあった場合、これまでは対象のフロアやインターネット回線を引き込んでいる部屋に行って確認をしなければなりませんでした。これについて週1回の定例会内でMINDへ相談したところ、当初予定のなかったヘルプデスク室内へ予備品であったL2スイッチの転用や廃棄予定であった既存ハブボックスの再利用といった提案をいただき、宿泊棟各フロアのネットワークをヘルプデスクまで延伸することができました。これにより宿泊者より問い合わせがあった場合でも自席から事象の確認を行うことが可能となり、日々の運用負荷が格段に軽減されました。スケジュール通りに構築ができたのもこうしたMINDの大規模ネットワークの構築力があったからだと思います」と評価しています。

導入効果

どこでも使える無線LANにより利用者の利便性と満足度が向上

無線LANの新規導入と有線LANの更改により、JICA東京におけるネットワーク基盤は整備されました。まず、無線LANの新規導入によって研修員の満足度が高まりました。川口氏は「海外から訪れる研修員は、本国にいる家族と連絡が取れないととても不安になります。今回、無線LANの導入でFacebookやSkypeなどで海外の家族と気軽につながることができるようになったため、研修に集中できるようになり、満足度も高まりました」と効果を語ります。

JICA東京の職員においても事務室で使っているノートPCを会議室などに持ち出し、利用することが可能になりました。「その結果、職員は紙の資料を印刷したり、資料を会議の参加者分を印刷して配布したりする手間がなくなり、ペーパーレス化による業務の効率化が加速しました」と外崎氏は述べます。

今後の展望

無線LAN環境などを活用して職員の働き方改革を推進

今後については、このたび整備したネットワーク環境を基に研修員により快適な研修環境を提供していくとともに、リモートによる運用保守の実現を検討しています。外崎氏は「JICA東京のIT施策は、JICA本部の方針を踏まえて決定されるため、本部と検討を重ねながらネットワーク環境の強化、運用保守の効率化を進めていきます」と語ります。

また、職員の働き方改革の推進も取り組むべき課題のひとつで、外崎氏は「将来的には、フリーアドレスや在宅勤務などに対応することも継続して考えていきたい」と述べます。

JICA東京は、国際協力の総合窓口・活動拠点として各種機関と連携し、多様な援助手法を用いながら開発途上国が抱える課題解決を支援していきます。

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