中外製薬株式会社様
Fast Start for Zscaler(ゼロトラスト)導入事例
世界最高水準の創薬の実現に向けて
DX戦略「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」を支えるセキュリティー対策
新薬創出による持続的な価値創造に向けてデジタル技術の活用を進める中外製薬株式会社は、サイバーセキュリティー対策を強化するためゼロトラストネットワークを構築しました。三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社(MIND)の支援を受けながらSDP*(Software Defined Perimeter)化、セキュアウェブゲートウェイ、システムに対する認証認可の仕組み等を段階的に導入し、マルチクラウド環境におけるセキュリティー・ガバナンスの強化と効率的な運用を実現しています。
* SDP(Software Defined Perimeter):ネットワーク全体へのアクセスをユーザーに許可するのではなく、業務上必要な情報資産だけに接続させる新しい接続方式

デジタルトランスフォーメーションユニット
ITソリューション部
プラットフォームサービスグループ
グループマネージャー
横田 大典 氏
デジタルトランスフォーメーションユニット
ITソリューション部
プラットフォームサービスグループ
石堂 孝夫 氏
デジタルトランスフォーメーションユニット
ITソリューション部
プラットフォームサービスグループ
千木良 勇貴 氏
導入背景
ネットワークのあるべき姿を構想しゼロトラストの導入を決断
がん領域の医薬品やバイオ医薬品で国内トップクラスのシェアを誇る中外製薬。現在、2030年に向けた成長戦略「TOP I 2030」のもと、「世界最高水準の創薬の実現」と「先進的事業モデルの構築」を柱にヘルスケア産業のトップイノベーターを目指しています。「TOP I 2030」の実現に向けたキードライバーの一つであるDX戦略「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」では、デジタル基盤の強化、すべてのバリューチェーンの効率化、デジタルを活用した革新的な新薬創出を基本戦略としています。
同社はマルチクラウドによる全社共通デジタルIT基盤「Chugai Cloud Infrastructure(CCI)」を構築しており、標準化の促進とセキュリティー・ガバナンスの強化を進めています。セキュリティー強化の必要性について、デジタルトランスフォーメーションユニット ITソリューション部 プラットフォームサービスグループ グループマネージャーの横田大典氏は次のように語ります。
「創薬研究からデータ分析まで、適材適所でクラウドを活用するための基盤としてCCIを構築していますが、社外からもアクセスできるため、セキュリティー対策の強化は不可欠です」
クラウドサービスの利用拡大、社外とのコミュニケーションや協業の増加など、システム利用に対して大きな変化が起こる中、同社はネットワークとセキュリティーのあるべき姿を構想しました。デジタルトランスフォーメーションユニット ITソリューション部 プラットフォームサービスグループの千木良勇貴氏は以前のネットワークについて次のように振り返ります。
「以前のネットワークは、社内システムやインターネットサービスを利用する際に国内は国内のデータセンター、海外の関係会社は各地域のデータセンターを経由する構成で、各拠点のファイアウォールやプロキシで通信を制御していました。しかし、リモートワークの広がりにより従来の境界型防御だけでは対応が難しくなってきたことから、接続元やデバイスにとらわれることなく制御できるゼロトラストネットワークの導入を決断しました」
選定ポイント
MIND のITインフラ対応力とネットワークを熟知した提案を評価
ゼロトラストネットワークについてはクラウドとの親和性が高く、グローバルで実績が豊富なZscalerを採用し、MINDを導入パートナーに選定しました。MINDをパートナーに選んだ決め手について、デジタルトランスフォーメーションユニット ITソリューション部 プラットフォームサービスグループの石堂孝夫氏は次のように語ります。
「選定の決め手はRFPの内容を深く理解した提案にありました。当社がネットワーク経由で利用するシステムは幅広く、実現すべき要件も数多くあります。ビジネスに影響を及ぼすことなく、ゼロトラストネットワークに移行することが求められる中、MINDの提案書には確実に遂行するための具体策が記載されていました」
2021年10月にスタートしたプロジェクトは、3つのフェーズに分けて進めました。2021年10月から2022年12月までの第1フェーズでは、Zscaler Private Accessを導入し、国内およびシンガポールのリモート接続とSDP化、多要素認証を実現しました。
2023年1月から2024年3月までの第2フェーズでは、オンプレミスのインターネットゲートウェイをZscaler Internet Accessに移行。社内20システムを対象に、認証・認可に基づいたアプリ制御を開始しました。さらに、社外のみならず社内ネットワークにもZscaler Private Accessを導入。会社標準のPCに加えスマートフォンのゼロトラスト接続を実現し、海外2か国目として台湾へのゼロトラストネットワークを拡大しました。
2024年5月からは第3フェーズを開始し、2024年12月の終了を目処に認証・認可に基づいたアプリ制御を200システムまで拡大し、さらにマルチクラウド環境のCCIについてもセキュアゲートウェイの導入を拡大する予定です。国内の工場や研究所で利用している会社標準以外の業務用PCに対しても対象デバイスを拡大し、国内と欧米で利用するすべてのデバイスをZscaler Internet Accessで管理してガバナンスの統一を図ります。
導入はMINDの支援によりフェーズ単位でのスモールスタートで進めました。ファーストユーザーは導入担当部署であるITソリューション部の約70名とし、リモート環境のSDP化、インターネットゲートウェイの切り替えなどを進めました。
「スモールスタートの段階で対処方法を把握できたこともあり、その後の展開ではスムーズに進めることができました。解決策に対するMINDの回答はスピーディで助けられました」(石堂氏)
認証・認可に基づくアプリ制御も第2フェーズは20システムからスタートし、第3フェーズで200システムと一気に拡大しました。
導入効果
安心・安全なネットワーク基盤によりセキュリティーレベルが大幅に向上
ゼロトラストネットワークの導入で安心・安全なデジタル基盤が確立され、ユーザーの負荷なくセキュリティーレベルを強化することができました。
「リモートワークや海外出張において最適な経路で通信ができるようになりました。その結果、クラウドストレージを使用する場合、20%ほどアップロードが速くなりました。社内システムやSaaSへのアクセスに関しては、すべてがZscalerのセキュリティーゲートウェイを介して行われるため、常に最新のセキュリティー機能を適用した通信が実現しました」(千木良氏)
事業規模が拡大する中、クラウドならではの柔軟なスケールアップが可能になったほか、グローバルレベルのガバナンス向上に寄与することもできました。
「国内外の拠点やデバイスも含めて同一の基盤になったことでガバナンスを効かせられることが最大のメリットです」(石堂氏)
今後の展望
ユーザーエクスペリエンス向上に向けてゼロトラストの機能強化を継続
今後について運用中のゼロトラスト環境を、利用者の利便性向上に向けて機能強化を継続していく方針です。その一つが、クラウド型監視プラットフォーム(Zscaler Digital Experience)の導入で、エンドユーザーの端末やアプリの通信状態を可視化し、ネットワーク遅延などのボトルネックやトラブル原因を早期に把握しながらユーザーエクスペリエンスの向上に努めていく考えです。
CHUGAI DIGITALにおけるデジタル基盤の強化は現在も進行中で、今後も進化を続けていきます。
「クラウドへのリフトを終えた後は、クラウドネイティブなアーキテクチャへのシフトを進めていきます。私のチームの合言葉でもある“前例は自分たちが作る”を実現するための最良なパートナーの1社として、MINDには新たなソリューションの提案を引き続き期待しています」(横田氏)
中外製薬は、独自のサイエンス力・技術力に、最先端のデジタル技術を掛け合わせることで、自らのビジネスを変革し、社会を変えるヘルスケアソリューションを提供していきます。