シリコンバレーだより8
アメリカシリコンバレー近況と注目ソリューション
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2025年7月28日
当社ITリサーチオフィス(ITR)は、2005年10月に米国最新技術動向を調査することを目的として、米国カリフォルニア州シリコンバレー地区に設立されました。設立以来19年以上にわたり、シリコンバレーにオフィスを構え、米国の技術動向の調査を継続して行っています。主な調査テーマはITインフラに関わる技術動向です。最新の生成AIはもちろん、クラウド、セキュリティー、ネットワークなど、多岐にわたる領域を対象とした調査を行っております。
1.米国での生活
こんにちは。前回のコラム投稿(24/12)からは8ヵ月が経ち、家族も加わり妻と2人の息子(8歳と5歳)とともに暮らしています。仕事では日々アップデートされるAI技術やIT技術の動向を追いかけながら、家庭では子どもたちの好奇心に振り回され、なんとか毎日を楽しんでいます。この春、ちょっとした休日を利用して、家族でアルカトラズ島へ観光に出かけました。トランプ大統領がこちらの刑務所再開を検討して話題になった島です。サンフランシスコ湾をフェリーで渡り、かつての刑務所跡を巡るツアーは、息子たちにとっても刺激的だったようで、「ここにホントに人が住んでたの?」と目を丸くしていました。
一方、仕事では5月に開催されたRSA Conference 2025(RSAC)に参加し、セキュリティーの最前線を肌で感じてきました。今年のRSACは、セッション内容だけでなく、展示ブースや周辺イベントも大変活気がありました。ITリサーチオフィス(ITR)では技術調査の他に日本からの出張者の方のアテンドも行なうことがあり、Waymo(自動運転タクシー)への試乗体験をアレンジでき、少しですが駐在員としての腕が上がった気持ちになりました。こちらベイエリアでは右下図のようにWaymoの乗車範囲が徐々に拡大中です。

© OpenStreetMap contributors
(https://www.openstreetmap.org/copyright)
2.AIの今とこれから
AIの進化は早く前回のコラムでご紹介したエージェンティックAI(Agentic AI)は、米国では定着し、自ら考え、判断する“仲間”のような存在に変わりつつあります。また、AIの分野でも生成AI(Generative AI)、エージェンティックAI(Agentic AI)、フィジカルAI(Physical AI)とAIの進化は進んでおり、今後ビジネスでの生き残りをかけて様々な企業がAI分野に多額の投資を行っている状況は前回の投稿から変わりありません。最近はバイブコーディング(vibe-coding)という考え方も注目を浴びています。これは、ユーザーの雰囲気や暗黙の意図(vibe)を察して、AIがコードやタスクを提案するというもの。プログラミングコードを書く作業の大半を生成AIに任せ、AIの技術革新が生産性の向上を後押しするものです。我々のようなIT技術者の雇用や働き方を変えるインパクトを持つとされています。私自身も、学生時代にかじった程度のコーディングスキルでは今まではとても手が出せなかったアプリケーション作成についても様々なツールを試しながら業務活用で活かせないか模索しています。
3.AI活用NOC:見えないところで支える技術たち
次に、少し視点を変えて「ネットワークの裏側」についてお話ししたいと思います。
最近、我々の業界:MSP(マネージドサービスプロバイダー)の現場では、AIを活用したNOC(Network Operations Center)の導入が進んでいます。米国でも、こうしたMSP主体の展示会に参加すると、その進化には目を見張るものがあります。
たとえば、AI分析によってネットワークの異常を“起きる前”に察知し、プロアクティブな対応を行う取り組みが進んでいます。AIが経路の最適化や障害の兆候をリアルタイムで監視しており、異常が発生する前に即座にアラートを上げ対処が始まります。こうしたAIを活用した運用は、顧客側にとって大きなメリットがあると考えます。自社でAIや監視基盤を一から構築しなくても、当社が提供するサービスを通じてAIを活用した運用を“まるごと”享受できるからです。ネットワークというと、目に見えない存在ですが、私たちの暮らしや仕事の快適さを影で支えてくれている。そんな“縁の下の力持ち”の進化を米国側からもサポートしてまいります。
4.クラウドインフラ運用:より柔軟・効率的かつレジリエントに
米国におけるクラウドインフラ管理では、AI利用の加速が後押ししてハイブリッドクラウドの活用拡大が進み、AIと自働化がトレンドとなっています。米国では新技術の採用に積極的ですが、やはりオンプレミス環境のレガシーデータの蓄積も大きくAI対応できない近代化「モダナイゼーション」の難易度が高い状況です。クラウドベンダやソフトウエア会社のソリューション提供も相次いでおり現地では最新技術を組み合わせ企業のITインフラをAIへ最適化することに全力でシフトしています。企業は単一クラウドサービスに全てを依存するのではなく、最適なサービスを自由に選択し性能を最適化しつつリスク分散を図っています。同様のお悩みをお抱えのお客様は一度当社へご相談いただければと思います。
5.AIネイティブSOC:セキュリティーにも“気が利く”AIを
最後に、私の専門であるセキュリティーについて少しだけ。いまセキュリティー業界で注目されているのが、AIネイティブSOC(Security Operation Center)という考え方です。これは、最初からAIを活用する前提で設計された、次世代のセキュリティー監視体制のことです。従来のSOCは、たくさんのアラートが出ても、その中から重要なものを人間が見分けなければならず、対応が遅れがちでした。ですがAIネイティブSOCでは、AIがアラートを分類したり、相関関係を自動で分析したりしてくれるので、本当に対応が必要なものに集中できる。ITRでは米国のスタートアップを調査し、AIが脅威を“気づいてくれる”体制を少しずつ整えています。
おわりに―未来を支えるデジタルイノベーションのパートナーとしての役割
テクノロジーの進化は止まりません。AI、ネットワーク、クラウド、セキュリティーも、ますます複雑でスピードの速い領域になってきています。一方で、それを日常の業務においてどう活かすか、企業がどのように柔軟に取り入れるかが、これからの差になっていくと感じています。
私たちのようなSIer(システムインテグレーター)やMSP(マネージドサービスプロバイダー)には、単なる「導入支援」だけではなく、「運用の最適化」や「継続的な改善提案」といった役割がますます求められています。たとえば、AIネイティブなSOC・NOC運用、クラウド基盤のセキュアな設計など、高度化・自動化するIT環境を“わかりやすく、確実に使える形にすることが、私たちの使命だと考えています。ITRでは米国の最新テクノロジーを国内開発部門と連携し、お客様のビジネスに寄り添い、業務の安心と効率、そして未来の成長を支えたいと考えております。
- RSA ConferenceはRSA Security LLCの登録商標です。
- WaymoはWaymo LLCの登録商標です。
- OpenStreetMapはオープンストリートマップ・ファウンデーションの登録商標です。
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