2025年ITトレンド5選!
注目のAGI、サプライチェーン攻撃、デジタルツイン…2030年に向けた新潮流を大予想
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2025年1月17日
2024年は生成AIを中心とするテクノロジーが大きな注目を集め、ビジネスに大きなインパクトを与えました。2025年、日本のあらゆる業界が新たな局面を迎えます。AGIの台頭、サプライチェーンセキュリティーの強化、グリーンデータセンターの推進など、多岐にわたる課題とチャンスが待ち受けています。本稿では2025年注目のITトレンドを探ります。
① 知的業務もこなす「AGI」の誕生
生成AIの象徴ともいえる「ChatGPT」が登場してから早2年が経ちました。業務シーンでは、問い合わせ対応やサービス操作案内の自動化・効率化を図るといった活用がされています。AIを標準搭載したPCも各社から販売されており、AIはより身近な存在になるといえます。
そのような生成AIの進化形として、2025年中に実現すると予想されているのがAGI(Artificial General Intelligence:汎用人工知能)です。
従来型のAIはあらかじめ学習されたデータをもとにタスクをこなす作業に留まっていました。一方でAGIは、学習させていない作業に直面しても、新たな経験や知識から学んで判断したり、能力を高めたり、新たな課題解決を導き出したりといった知的業務をこなすのが特徴です。
AGIは市場予測やビジネスプランの創出といった高度なアウトプットも可能だと考えられています。問い合わせにも人間が対応しているかのようなCX(顧客体験)を与えられるかもしれません。
将来的にASI(Artificial Superintelligence:人工超知能)が登場するとも予想されます。ASIは人間より優れた知能や能力を持ち、自己進化によって人類では成し得なかった課題を解決できるといわれています。ASIの台頭は「シンギュラリティー(技術的特異点)」への到達を意味します。もしかするとAIがAIを開発するなど、人類には予測できないスピードで社会や技術が発展していく可能性があります。
② 「サプライチェーンセキュリティー」への対応:格付け制度が開始予定
新たなサイバー攻撃の手口として増えているのが「サプライチェーン攻撃」です。これは、ターゲット企業を直接攻撃するのではなく、まずセキュリティー対策を十分に施していない関連会社や取引先などに攻撃を行い、そこを踏み台に目標の企業に不正侵入しようとする手法です。主に、標的型メールなどを介してサプライチェーン全体を攻撃します。
実際に、大企業が取引する顧客に向けてマルウェアがばら撒かれ、サービスが停止してしまう事例がたびたび報告されており、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が公表する『情報セキュリティ10大脅威 2024』でもランサムウェアによる被害についで2位にサプライチェーン攻撃の脅威がランクインしています。
このように拡大し続ける脅威への備えとして、経済産業省はサプライチェーン企業のセキュリティー対策強化を目的に「格付け制度」を2025年中に始める予定です。これは、5段階で企業のセキュリティーレベルを評価する制度です。1〜3レベルは企業に最低限求める対策で、ソフトウェア更新や情報管理体制の整備などが要件とされます。4〜5レベルは重要なインフラ事業者(電気水道や鉄道など)に求める対策で、インシデント時の早期復旧策や第三者認証が要件とされます。
認証は資金調達や補助金申請の条件になる可能性もあり、取得していなければ対象外となるかもしれません。2025年は認証取得のための各種ソリューションが注目されるでしょう。
③ IT業界のCO2削減策:「グリーンデータセンター」が注目の的に
カーボンニュートラル実現に向けて政府は2030年に中間目標(2013年比で46%削減)を掲げています。残り5年を切る2025年はグリーンデータセンター(※エネルギー効率を向上させ、環境負荷を低減するデータセンター)の活用が本格化する年になるでしょう。世界のグリーンデータセンター市場は2018年に65億米ドルでしたが、年間平均成長率23.4%で維持して2026年には350億米ドルに達すると見込まれています。
この成長を後押しするのが新たな省エネ技術の実用化です。電気配線を光配線技術に変えることで、従来比で電力消費を99%削減でき、データセンター全体では40%以上の削減が期待されています。半導体分野でも2nmプロセス技術を採用した低電圧駆動動作の実用化が進み、電力消費を90%削減する省エネ化が視野に入ってきています。
AIの利用拡大から必要な計算量が増えたことで、データセンターの電力消費量はさらに増加する見込みもあり、グリーンデータセンターの活用がより注目されます。
④ 公表から早7年…「2025年の崖」がついに到来
2025年の崖は、経済産業省が2018年のDXレポートで警鐘を鳴らした経営課題です。レガシーシステムの維持が限界を迎え、そこから生じる経済損失が年間約12兆円に達すると予測されています。
主な原因はエンジニアの人手不足です。レガシーシステムによく採用されているCOBOLなどの古いプログラミング言語を扱えるエンジニアの多くが2025年までに定年を迎えます。その結果、2030年までに最大約79万人のIT人材が足りなくなる見込みです。
経済産業省は2025年の崖への対策として、「DX推進ガイドライン」の策定や自己診断スキームである「DX推進指標」の構築、DX人材育成の環境整備などの施策を打ち出しました。その他にも、デジタルガバナンス・コードに基づく「DX認定制度」は、DXの理解と推進に役立ちます。
DXに関して中小企業は経営資源が限られるため、取り組みが遅れがちといわれます。実際のところ、どのような進捗になっているのでしょうか。
まず、グローバルな視点から見ると、日本企業は2023年時点で7割近くがDXに取り組んでいることが分かっています。特に「全社戦略的に基づき、全社的にDXに取り組んでいる」の割合は2022年度の米国調査より多くなっています。
次に日本国内における企業単位で見てみましょう。東京商工会議所の2023年調査によると、約8割の中小企業がデジタル化に取り組んでいることが明らかになりました。デジタルシフトが進んでいない企業(口頭連絡、電話、帳簿での業務が多い)は前年比で3.9%減少し、DXは確実に広がっています。
デジタルシフトした企業の約77%が成果を実感し、特に業務効率化(81.4%)や業務の見える化(48.7%)、標準化、脱・属人化(35.1%)といった効果が顕著です。また、「直近3年間で利益が増加傾向にある」企業の86%はデジタルシフトに取り組んでいることから、DXと業績には正の相関関係が見られます。
今後の課題としては、ITの「導入」段階から「活用」段階への移行が挙げられており、2025年はより高度なデジタル活用による企業価値の向上が求められるでしょう。

出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2024(データ集)」
https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/eid2eo0000002cs5-att/dx-trend-data-collection-2024.pdf
⑤ AIや5G通信で「デジタルツイン」がさらに加速
デジタルツインは、現実世界の情報をIoT機器などで集めて仮想空間にデジタルコピーを再現するテクノロジーです。AIと5G通信の発展により、その活用範囲が製造現場から都市、さらには国家レベルに拡大しています。その代表例の一つがシンガポールの「バーチャルシンガポール」プロジェクトです。国全体をデジタル空間に再現することで都市計画や災害対策に活用しています。
日本でも国土交通省が「Project PLATEAU」を通じて全国の3D都市モデル整備を進め、防災や街づくりに活用しています。また、トヨタ自動車は静岡県裾野市に建設中の「Woven City」で、都市全体のデジタルツイン化によって次世代の街づくりに挑戦しています。
企業のデジタルツイン活用も進んでいます。川崎重工は工場全体をメタバース化する「インダストリアルメタバース」の構築を進め、生産ラインの遠隔管理や予知保全を実現しています。建設業界では、清水建設や大林組が建築現場のデジタルツイン化を進め、施工管理の効率化や品質向上を実現しています。
2025年以降、デジタルツインはAIやメタバースとの掛け合わせでさらに進化すると予測されています。AIの発展によって3Dモデルの生成が高速化・高精度化し、デジタルツイン構築のコストと時間の削減が期待されます。また、メタバースとの連携で複数人が同時にリモートから仮想空間でシミュレーションを行い、リアルタイムでの意思決定が下せるようになるかもしれません。
2024年に続き、2025年も新たなテクノロジーがIT業界に限らず、あらゆる業界に影響を与えていくでしょう。時代の波に乗り遅れないためにはテクノロジーの進化にアンテナを張り、自社の課題とチャンスを見極める目を持つことが重要かもしれません。
- Project PLATEAUは国土交通省都市局長の登録商標です。
- トヨタ自動車、Woven Cityはトヨタ自動車株式会社の登録商標です。
- 川崎重工は川崎重工業株式会社の登録商標です。
- 清水建設は清水建設株式会社の登録商標です。
- 大林組は株式会社大林組の登録商標です。
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