シリコンバレーだより7
アメリカシリコンバレー近況と注目ソリューション

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2024年12月19日

当社ITリサーチオフィス(ITR)は、2005年10月に米国最新技術動向を調査することを目的として、米国カリフォルニア州シリコンバレー地区に設立されました。設立以来19年以上にわたり、シリコンバレーにオフィスを構え、米国の技術動向の調査を継続して行っています。
シリコンバレーのオフィスには、三菱電機のイノベーションチームと共に約15名が在籍しており、そのうちITRとしては現在2名体制で調査活動を実施しております。
主な調査テーマはITインフラに関わる技術動向です。最新の生成AIはもちろん、クラウド、セキュリティ、ネットワークなど、多岐にわたる領域を対象とした調査を行っております。

本コラムは今年10月から現地に着任したITR 伊藤が執筆させて頂きました。

米国の概況

11月の米国大統領選挙は日本でも大きな話題となったと思いますが、トランプ氏が当選し、投票をめぐる大きな混乱がなかったため、個人としては安心しています。今後の政策動向を注視していきたいと考えています。

技術的な話の前に、少し私生活をお伝えしたいと思います。シリコンバレー駐在員としての楽しみの一つに、ベイエリアで開催されるイベントに足を延ばすことがあります。先日、サンフランシスコで行われたエアショーでは、ブルーエンジェルスの飛行が迫力満点で、とても感銘を受けました。トラブルの数も日本とは比較にならないほどありますが、普段日本では経験できない貴重な体験ができるのが駐在員としての良いところだと感じています。

 

私の撮影技術の未熟さで迫力が伝わらないことが悔やまれますが、心(ハート)を込めて撮った写真を掲載させていただきます。

シリコンバレーの最新動向

近年の変化
シリコンバレーは長年、テクノロジーと革新の中心地として注目を集めてきました。COVID-19終息後、一部の企業がカリフォルニア州の高い生活費と税負担を理由に、生活費が安く税制が優遇されているテキサス州やフロリダ州などへ移転する動きがありました。

 

現在のAI技術への注力
しかし、現地に駐在していると、シリコンバレーでは依然としてAI技術への投資が活発であることが感じられます。NVIDIAやGoogleなどの大手企業、そしてAIスタートアップがAIブームを牽引している状況が続いています。

 

人材と技術の集積
人材面でも、シリコンバレーは優位性を保っています。米国のAIエンジニアの約35%がこの地域に集中しているとされ、毎週のようにAIに関する会議やカンファレンスが開催されています。

 

スタートアップ環境の優位性
スタートアップの資金調達においても、シリコンバレーは地域として優位に立っています。AIおよび機械学習スタートアップの初期段階の資金調達の約40%が、このベイエリア地域のベンチャーキャピタルによるものだという情報もあります。また、投資家とスタートアップのマッチングを目的としたコンテストも数多く開催されています。

 

AIの活用と今後の展望
AIの活用については、日本国内の多くの企業が投資効果や利用方法を模索している状況が見受けられます。一方、米国ではワークフローを整理し、AIで代替可能な業務や作業を置き換える流れが加速しています。注目すべきは、単一のAIですべてを処理するのではなく、各作業に最適なAIを複数組み合わせることで最適解を得る「マルチエージェント型AI」が多数登場していることです。

ITインフラの注目ソリューション

クラウド

クラウドはシリコンバレーで注目されるITインフラ分野ですが、AI(人工知能)とクラウドコンピューティングとを組み合わせたソリューションが特に脚光を浴びています。従来のオンプレミス環境からクラウドへの移行は一段落し、多くの企業が複数のクラウドベンダーを利用するマルチクラウド環境を構築しています。マルチクラウドの導入は、可用性やシステムの柔軟性の向上を図り、単一のベンダーへの依存を分散することでリスク管理にも有効といわれています。
また、データレイクとデータウェアハウスの両方の利点を組み合わせた「データレイクハウス」も、新たなデータ管理ソリューションとして注目されています。従来のデータウェアハウスは、構造化データに適していましたが、データレイクハウスは構造化・非構造化データの両方を一元的に管理できるため、AIとデータ分析の高度化が可能となります。データレイクハウスにより、企業は膨大なデータを迅速かつ柔軟に処理し、ビジネスの意思決定に役立てることができます。特に、リアルタイム分析や予測分析が重要な企業にとって、迅速なデータアクセスが可能なデータレイクハウスは強力なビジネス基盤となります。

ネットワーク

ネットワークにおいてもエッジコンピューティングの進展が大きなトピックです。データ処理の速度を向上させるために、データをクラウドに送信せずに、現場(エッジ)で処理する技術が注目されています。これにより、IoT(モノのインターネット)を活用したリアルタイム処理が可能となり、5Gネットワークの普及とともに、エッジコンピューティングは次世代インフラの要素として重要性を増しています。AI活用でもより多くの情報をエッジで処理できることは重要となります。
また、コミュニケーション技術として米国のAR/VRの動向も変化しています。2023年に一時的な落ち込みを経験しましたが、Apple Vision Proの発売やMeta Quest 3などのMRデバイスの普及により今後再び成長に転じると予想されている状況です。

セキュリティー

セキュリティーへの需要も今以上に高まっています。サイバー攻撃が複雑化し巧妙化する中で、セキュリティーの重要性が広く認知されるようになりました。上記のマルチクラウド環境や様々な場所で働くリモートワーク環境にはゼロトラストネットワークが適しています。ゼロトラストの考え方では、ネットワーク内のあらゆるアクセスが認証・認可され常に検証されるため、これにより、企業はサイバー攻撃のリスクを低減し、より安全なインフラを構築することが求められています。
また、AIの導入が進む中で、プライバシー保護やデータ倫理に関する問題も浮上しています。データ分析の高度化が進む一方で、ユーザの個人情報をどのように保護するかは重要なテーマであり、これに対する法的な枠組みや企業のガバナンス強化が求められています。

まとめ

シリコンバレーのITインフラの進化は働き方の変化、環境や社会的な課題への対応が求められるなど、従来の姿から変容を遂げています。シリコンバレーは引き続き、AI技術を利用した革新と新たな技術の発展を牽引する地域として重要な役割を果たしていくと考えます。
ITインフラに関しては上記で記載した、クラウドコンピューティング、エッジコンピューティング、データレイクハウス、ゼロトラストといった新技術が次々と登場し、それぞれがAIを組み入れて発展段階にあり、次世代のインフラにおける要素として重要視されています。
今後もシリコンバレーから新たな技術やインフラソリューションが生まれ、世界のIT産業に影響を与え続けると考えます。当社 ITRではお客様に求められるサービスを提供し続けられるよう、国内の各事業部と連携し最新の引き続き米国での調査とそれに基づく当社のサービス開発を支援し、お客様への安心安全なサービス提供に貢献していきます。

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