ネットワークの帯域輻輳を解消「DXの推進には欠かせない『SD-WAN』とは?」

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2022年3月25日

SaaS(Software as Service)をはじめとしたクラウドサービスの利用やテレワークの普及が進むにつれ、インターネットへのトラフィックが急増し、さまざまな箇所にボトルネックが生じています。そんななか、迅速かつ柔軟にネットワーク環境を対応させる解決策としてネットワークシステム分野で注目されるようになったのが「SD-WAN」です。今回はSD-WANが注目されるようになった背景や導入メリットについて紹介します。

SD-WANが開発された背景とは

SD-WAN(Software-Defined WAN)は、ソフトウェアを用いてネットワークを制御するSDN(Software-Defined Networking)の発想をWAN接続にも適用させた技術です。
WAN(Wide Area Network:広域通信網)とは、インターネットも含む極めて広域なネットワークであり、点在するLAN(Local Area Network)とLANを結ぶ公衆網といえます。これらをソフトウェアで制御するSDNによって接続、管理するのがSD-WANということになります。
企業で利用するWANの多くは、通信事業者が提供する専用回線を利用しています。専用回線で国内および海外の拠点間を結ぶことで、ネットワークを利用するユーザーが、データセンターにセキュアにアクセスしたり、機密情報をユーザー間で安全に共有したりすることも可能となっています。

しかし、SDNによって接続、管理しない従来のWANでは、不具合が発生した際、修復に多くの時間がかかっていました。これは多くの場合、従来のWANではネットワークを可視化できておらず、不具合の原因や問題が発生している場所の特定に時間がかかるということに起因しています。また、従来のWANでは、新たな拠点に接続をするための設定にも人手と時間を要していました。さらに、企業のネットワーク管理は、次第に属人化していき、運用管理に多くのコストが必要になっていったのです。
SD-WANはこうした課題を解決するために開発されました。ソフトウェアで制御することでネットワーク全体が可視化され、不具合が発生してもリモートで解決できるようになりました。これによってネットワーク関連業務の属人化も解消されるようになり、ベテランエンジニアでしか解決できない問題も大幅に減少していきました。

イメージ:ネットワーク

ビジネスの成長に伴いネットワークインフラの負担が増大

ここまで述べた背景から次第に利用が進んできたSD-WANですが、市場としては、これからも大きく成長していくものとみられています。

イメージ:国内 SD-WAN 史上予測:2020年~2025年

出典:IDC Japanプレスリリース「国内SD-WAN市場予測を発表」(2021年9月28日)

IT専門調査会社のIDCは、国内SD-WAN市場は市場規模が2020年で37億2,200万円でしたが、2021年にはこれが54億9,200万円に達するとみています。さらに成長を続け、2020年~2025年の5年間における年間平均成長率は43.2%であり、2025年の市場規模は223億7,800万円と予測しています。(ここでのSD-WAN市場は、SD-WAN関連のハードウェア、ソフトウェア、マネージドサービス、インフラストラクチャ、プロフェッショナルサービスに対するユーザー支出を対象としています)
こうした成長予測の背景には、多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組むことで、通信トラフィックが増大することが挙げられます。加えて、ペーパーレス化が進むことで、データのやり取りはもっと増えていくでしょうし、各種SaaSの利用が活発化すれば、さらにネットワークへの負荷は増大します。またテレワークがさらに普及することで、ますます通信インフラは業務に欠かせないものとなっていきます。
通信トラフィックが増大すれば、当然のことながら通信コストの適正化に取り組む必要が出てきます。その時に、ネットワークインフラの状況がリアルタイムに可視化されていなければ、対策のしようがありません。また、多くの社員の業務に対するネットワーク依存度が高まると障害復旧もこれまで以上に迅速でなくてはならなくなります。
そのほか国内外で拠点を増設、移設する際に、ネットワークインフラの設定に時間やコストを取られたくないというニーズもあるでしょう。それに応えるには、従来のインフラ技術ではなく、ソフトウェアで管理するネットワークが不可欠となります。

ネットワークの輻輳を解消し、作業負担を大幅に軽減

ここでSD-WANのメリットについてご紹介します。大きな特長として、「ローカルブレイクアウト」と呼ばれる手法によるネットワーク帯域の最適を実現できることです。これは、クラウドサービスなど特定経路の通信については直接インターネットを使えるようにすることで、既存の専用回線を使ったデータセンターへのアクセスの軽減を図る機能です。
近年、業務でMicrosoft 365※1やGoogle Workspace※2といったさまざまなクラウドサービスを利用するケースが増えています。本社やデータセンターに設置されたゲートウェイを経由する従来型の構成では、主にセキュテリィを考慮して各ユーザーがクラウドサービスに一気にアクセスするため、ゲートウェイに大きな負荷がかかるだけでなく、閉域ネットワークの帯域がひっ迫し、レスポンス遅延が発生しやすくなります。
このように、ネットワークが輻輳することで、業務にも支障が及んでしまい、IT管理担当者がユーザーからのクレーム対応に明け暮れている、という状況も発生しているようです。
そんなときに上述した「ローカルブレイクアウト」が役立ちます。特定のトラフィックを、プロキシサーバーなどを経由せずに、直接インターネットへ接続することで、各拠点からの通信負荷を軽減することが可能になるのです。これにより、ユーザーからの問い合わせが削減されるため、IT管理担当者は本来の業務に集中できたり、DX実現に向けたよりクリエイティブな業務に時間を回せるようになります。
また、SD-WANでは、設定作業をせずともネットワークに接続して起動するだけで直ちにサービスが利用できる「ゼロタッチプロビジョニング」が実現できます。これまでネットワークの設定を変える際は、各拠点に出向いて行うことが多かったのですが、現場ユーザーがハードウェアを一切操作しなくても展開できるようになるため、作業負荷の軽減が期待できます。
加えて、SD-WANを使うことでネットワークを可視化できます。管理者はコントローラーによってネットワーク全体の状況を把握し、集中管理すると同時に、複数のWAN回線の利用を最適化することもできるようになります。

SD-WANをさらに高度化するソリューションも登場

SD-WANソリューションは、従来のネットワークインフラを提供する企業だけでなく、仮想化ソリューションやネットワーク関連のソフトウェアを提供している企業からも開発、販売されています。SD-WANそのものをクラウドサービスとして提供する企業もありますし、アプライアンス製品の提供も並行して行っているケースもあります。
さらにローカルブレイクアウトでインターネット回線を直接利用することで発生するセキュリティーリスクを軽減するため、セキュアWebゲートウェイ(SWG)などのセキュリティー対策を別途提供するサービスも出始めてきました。
このようにSD-WANソリューションを提供する企業は、自社が培ってきた製品技術をベースに、他社にはないソリューションの開発を目指しています。いずれにせよ「回線速度の向上」「ユーザーエクスペリエンスの向上」「セキュテリィ確保のしやすさ」の3本柱が各ベンダーの目指すソリューションの進化目標となっています。
MINDもこうした各ベンダーの動きに合わせて、SD-WANの構築サービスをさらに進化させていきます。各ユーザー企業様のインフラに合わせた最適な導入プランを、これまで培った実績を基に、ご提案することが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。

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