ハンコのための出社がいらなくなる!?いま話題の“電子契約・取引”のキホンを解説!

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2021年4月22日

書類に押印するための出社を余儀なくされる「ハンコ出社」が社会問題化し、政府が行政のデジタル化推進および行政手続きにおける押印の全面廃止の方針を表明など、加速している「脱ハンコ」の流れ。これを受けて注目されている“電子契約・取引”について、概要・メリット・関連法令について解説します。

テレワークによって見えてきた課題

  • 今日は在宅勤務。取引先から「契約書を郵送したので押印・返送して欲しい」とメールが届いた。感染症が怖いが仕方ない。明日は電車に揺られて出社し、押印した後、送り返さなければ・・・。
  • 外回りをしていたらもうこんな時間。家に直接帰宅する方が近いのに、部下の見積り承認のため会社に戻らなければ・・・

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、在宅勤務・テレワークが一般的なものとなりましたが、便利さに気づく一方、このような紙書類やハンコを扱う業務が出来ないなどの不便さにも、気づかされることになりました。また、コロナ禍以前から話題の働き方改革も、実態としてはなかなか思ったように進んでおらず、わざわざ帰社するという様な非効率な業務も残っているようです。このような課題を解消するものとして、“電子契約・取引”の市場が賑わっています。どのようなものか、少し見ていきましょう。

イメージ:ハンコを押す

電子契約・取引とは?

まず、電子契約と電子取引の違いを整理しましょう。
「電子契約」とは、従来からの紙で締結する契約とは異なり、電子データのやり取りによって締結する契約を指します。
一方の「電子取引」とは、契約書以外の企業間の様々な紙文書のやり取り(見積書・注文書・納品書など)を、同じように電子データによってやり取りするものを指します。
いずれも、キーワードは「ペーパーレス」。オンラインを通じた契約・取引によって、物理的な紙・ハンコ・ペン・書庫が不要になる上に、さらに人の移動までも不要になることから、まさにいまの時勢に適した「契約・取引」の形といえるでしょう。

企業間のオンラインでのやり取りとしては、既にメールがあるのでは?と思う方も多いと思います。契約書だけでなく見積書や注文書など、メールで送って確認してもらう、というケースはビジネスシーンではよく見られます。
しかし、電子データは容易に改ざんができてしまいます。メールを送った後、相手方に金額の書き換えや、数量を変更される可能性もゼロではありません。正式書類として紙の原本の到着までの間にこのような事態になっては堪ったものではありません。つまり、デジタルであるが故に生じる、『“いつ”、“誰が” 作った電子データなのか』、『作られてから改ざんされていないか』といった不安やリスクに対し、きちんと証明できる仕組みが必要になってきます。

このように、電子文書の真正性を担保して、企業間で安全に電子文書をやり取りできるのが、“電子契約・取引サービス”です。多くの“電子契約・取引サービス”はクラウドを介して電子文書のやり取りができ、さらには、データだけでなく押印された原本が必要、というような企業文化に対応し、電子的なハンコ(印影)を利用できる機能も備えているサービスも出てきています。

イメージ:電子契約・取引

電子契約・取引の様々なメリット

電子契約・取引の主なメリットとして、以下3つが挙げられます。

契約・取引業務の効率化
紙を使用せずオンラインで契約・取引を行うため、在宅勤務中でも契約・取引が可能に。わざわざハンコのために出社する必要がありません。また、印刷や封入が不要となり、作業効率がUP。さらに短時間で契約・取引が出来るため、業務スピードもUPします。
コスト削減
オンラインでの契約となるため印紙が不要。そのほか、印刷費用や郵送費用、書類を保管するキャビネットやその場所の費用も不要で、書類を封入作業の人件費も掛かりません。
コンプライアンス強化
オンラインにより契約書の手続きが可視化され、契約の漏れを防止することができます。また、承認経路を設定することにより、複数の目で書類をチェック。ローカルに文書を保管せずクラウドで保管するため、災害時の原本を喪失するリスクを低減します。

また、多くの電子契約・取引サービスが、クラウドサービスとして月額提供されていますので、スモールスタートで気軽に開始し、必要に応じて利用者数を増減できるところも、メリットに上げられます。

一方、デメリットとしては、デジタル化に伴うものがあげられます。一つは、「取引先の理解を得る」というところでしょう。
自社がこれまでの“紙方式”から“電子化”へ契約・取引を変更することで、取引先にも電子化での契約・取引をお願いするケースが考えられます。取引先の社内フローが変更になったり、想定しない費用が発生するなどの影響がおよぶ場合があります。
もちろん、電子契約・取引によるコスト削減や業務効率化などのメリットは取引先にもありますので、ここは取引先と一緒に、電子契約・取引の対象とする文書の範囲を検討し、始めは小さく、徐々に範囲拡大する形を取っていくのがベターだと思います。
もう一つは、「社内の業務改革」です。これまでの契約・取引の業務の流れが、電子契約・取引サービスの利用を前提とした流れに代わりますので、業務フローの見直しが必要になる場合があります。フローの変更には社員の反発もあるかもしれませんが、電子契約・取引サービスのメリットをしっかり説明し、十分理解してもらった上で協力者と共に、業務フローの改革を進めていくといいでしょう。

電子契約・取引に関する主な法令

企業間における「契約」・「取引」は、様々な法律の下で取り交わされているのはご承知の通りです。電子契約・取引についても、従来の契約・取引と同じように法的な有効性が求められます。ここでは電子契約・取引を検討するにあたり、留意すべき主な法律をご紹介します。

電子署名法
正式名称は「電子署名及び認証業務に関する法律」といいます。情報化社会に伴い、電子データでの契約書作成のニーズが高まる一方、改ざんのリスクや押印できず本人確認がとりにくいなどの問題も出てきました。
これらを背景に、電子データでの契約書などでも、手書きの署名や押印と同等に通用する法的基盤を整備したのが、電子署名法です。
電子帳簿保存法
正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」といいます(略して、“電帳法”と呼びます。)。これまで紙文書での保存を義務付けられていた国税関係の帳簿や書類は、電子データとして保存ができるようになりました。
電帳法第10条に対応したサービスは、安全に長期間データを保存することが出来る基盤を備えた信頼性の高いサービスの証となるでしょうし、一部海外の電子契約・取引サービスでは、本法非対応のものもありますので、注意が必要です。

電子契約・取引の未来

政府のデジタル化・押印廃止の流れや感染症拡大など、2020年に大きく脚光を浴びた “電子契約・取引サービス”。将来感染症が収束し、会社への回帰が始まっても、ペーパーレスや脱ハンコなど効率化を求める流れは定着していくでしょう。
電子契約サービスの市場規模は2020年108億円、2024年264億円、2017年から2024年までのCAGR(年平均成長率)は37.8%と、企業のニーズを受け今後も大きく成長していく市場とみられています。
趣のあった“ハンコリレー”も時代の流れと共に、いよいよ終わりを迎える日が来るのかもしれません。

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