不適切なことが多かった時代の“昭和歌謡”
その人気再燃のヒミツを考える

執筆:役員室 上田 雅章

来年2025年は昭和100年。最近の年号とその時代にタイトル付けすると、明治モダン、大正ロマン、そして昭和レトロと言うのだそうです。
昭和どっぷりの私としては、“レトロ”などと称されて懐かしまれることには大いに抵抗を感じますが。
また令和から見ると昭和は不適切なことが多かったそうで、今、これらの一掃がなされているようで少々複雑な想いです。
しかしそんな昭和のポピュラー音楽、これが最近“昭和歌謡”としてじわじわ流行っているそうです。
音楽的な解説は専門家に任せるとして、この昭和歌謡が今再び最近のZ世代に注目を集める理由について考えてみました。

昭和歌謡はくどい

いまリバイバルしている昭和歌謡は、昭和後期、1970年代から1980年代の楽曲が多いのだそうです。
この時代、昭和は高度成長に成功し、懸命に成り上がり、自由をもぎ取り、社会の矛盾に反抗し、そして開き直り、陶酔し、バブル崩壊の頂へ至りました。時代は人を翻弄しました。
そんな時代の昭和歌謡、人と人、社会、世相、風景、そして時代との関わり、繋がり、絆、それらが紡がれたり解かれたりする情景を、丁寧に、くどく描写します。少ない文字数で、曲中の主人公を取り巻く風景、背景、そして心情を演劇のように描写し、多様な曲調に乗せ、聴く人を引き込みます。

そう言えば、1979年に発売されたソニーのウオークマンを初任給で買い、大瀧詠一さんの「恋するカレン」を聞きながら、秋葉原駅のホームで過ぎ去る電車を眺めた時、目の前に広がる情景がまるで映画のように感じられたことを懐かしく思い出します。

昭和歌謡の“くどさ”が、これがコロナ禍もあり“弧”に嵌まり込んでしまいがちなZ世代の方々には温故知新なのでしょうか。
最近のJ-POPの楽曲、確かに人の内面への切込みは鋭く、心象描写は的確で感心します。しかし説明する言葉・単語が多く、共感はできても没入し辛いように感じます。まあ私個人の感想で、加齢によるものかもしれませんのでご容赦を。

昭和歌謡とカラオケ

この昭和歌謡全盛期の1970年頃から、国民文化として花開いたのがカラオケ。
初期のころはスナックやバーにあった8トラックのカラオケ装置がレーザーカラオケに換わり、貨物コンテナを流用したカラオケボックスが若者の遊技場になります。更に通信カラオケで曲数が増大し、小洒落たビルに引越したカラオケルームは、子供から大人までが集う家族の娯楽の場となりました。

この家族カラオケの洗礼を浴びた1990年代の子供たち、今のZ世代20代、30代は、カラオケルームで両親、祖父母が歌う昭和のポピュラーソングの数々を聞いて育ったはず。つまりZ世代には、カラオケを通して昭和歌謡のDNAが知らず知らずのうちに摺り込まれたのだと想像します。

2000年頃、私の子供が中学校の卒業式の打上げをカラオケ店でやると聞き、ひっくり返りそうになったことを思い出しました。ここでも荒井由実さんの「卒業写真」が歌われたかもしれません。

昭和歌謡は世界へ

最近の日本人アーティストたちは、易々と世界に飛び出しワールドツアーをやってのけます。時代だなあと感慨します。
しかし2000年ころまでは、日本の歌手・グループ、楽曲が海外で話題となることはまれ。中国や東南アジアで、昭和歌謡の一部が歌詞を現地語に翻訳されカバーされヒットしている例はありましたが。

昭和歌謡は、欧米の音楽をテンプレートにしながらも、市場としては日本、日本人のための楽曲で、主に日本人歌手が歌ってきました。日本語/英語のハードルもあり、意識すらせずドメスティックな国内市場向けでした。
そのように創られた昭和歌謡、これが今、世界でウケるのだそうです。しかも歌詞は日本語のままで。

これにはインターネットが一役買っています。
インドネシアの人気ユーチューバー Rainych(レイニッチ)さんが、松原みきさんが1980年に発表した「真夜中のドア/ STAY WITH ME」を日本語歌詞で歌い、世界中で再生されている例は象徴的です。
日本人の感性が生み出す文化は、浮世絵やアニメ、映画のように海外の人にも共感される要素があるのだと思います。
これまでもアニメなどで親近感を得ていた日本のポップカルチャーの一つ、日本のポピュラー音楽は、自由に情報発信ができ、自在に情報獲得ができるボーダレスなインターネットにその調を乗せて、世界へ飛び出しました。
メディアの進化は文化を拡散します。

私が歌うと昭和歌謡は・・・

私にとって1970年代~80年代の昭和歌謡には、多感な青春時代の思い出が重なります。
懐かしくて家族カラオケでも歌うのですが・・・。せっかく画面で歌詞が色を変えてタイミングを教えてくれるのですが、字余り、字足らずが発生します。家族は苦笑し目を合わせないようにしてくれます。
私が歌う昭和歌謡、と言うより私が歌うこと自体が、不適切にもほどがある・・・コトなのでしょうか。

  • ソニー、ウオークマンはソニーグループ株式会社の登録商標です。

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