20代のころ初めて行った海外出張で、まんまと白タクに掴まりました。
それは二人の上司と行った某国でのこと。長旅の末降り立った空港で到着ロビーに出ると、身ぎれいで長身の青年が「タクシー？」とにこやかに手を上げます。海外出張経験のある上司の一人が余裕たっぷりに「イエス、タクシー」と。
青年は上司二人のトランクをさっと引き取り進み始めます。しかし私、青年がすれ違う何人かに得意そうに頷きながら進んで行く様子に、そこはかとない違和感を持ちました。
道路の先に白い大型セダンがあり、青年がドアを開けてくれ、上司二人が後部座席、私は助手席へ落ち着きます。上司がホテル名を告げると、青年は「オゥ、グッホテル」とうなずき、車は異国の陽光の中へするりと走り出しました。

しばらくして、私は後部座席で商談話に夢中の上司たちに「この国のタクシーは料金メーター無いんですね」と何気なく言いました。すると上司たちは短く沈黙。一人が「英語の練習だから、聞いてみなさい」と言います。
私、気後れしながら青年に聞きました。「ゼアリズ ノーメーター．ハウトゥ カリキュレート？」。
青年は一瞬､ヤベッて顔をしながらも､これで見るから大丈夫とインパネの距離計を指差します。そして全員が沈黙・・・。
それでも車は４０分ほどでホテルに着き、青年は「このメーターだと料金は85**(**は現地の通貨単位)」。上司は100**渡し「釣りは要らない、レシートをくれ」と。青年はニコニコ顔でメモ用紙に、“100.00** Henry Cab”と書いて寄越します。上司はメモを見つめ無言で財布にしまいました。

私は気になって、夕食を一緒した現地駐在員に一部始終を話しました。彼は開口一番、「あぁ典型的な白タクですね。相場の3倍。辺鄙な所で降ろされ身包み剥がされなかっただけまし。普通のタクシーでも遠回りはあります」とのこと。
海外出張経験のある上司は、「白タクでもあの身なりなら追剥ではないと思ったよ」と強がりました。

この体験以降、海外タクシーは私の重要警戒項目となります。
まずは白タクに引っ掛からないようタクシー乗場から乗ること。そして遠回り防止の“おまじない”を編み出しました。

其の1：事前に料金を知っておく

空港と市内のホテル間のタクシー代は旅行ガイドなどで見当がつきます。
ホテルから訪問先へのタクシー料金は、ホテルのドアマンに聞く。ドアマンは礼儀正しく凡その距離・時間・料金をしっかり教えてくれます。

其の2：乗り込む前に料金を決める

タクシーに乗り込む前に運転手に行先をメモで見せ、行けるか、いくらで、と聞く。
ドアマンが25**くらいと言った行先に対し、運転手は倍の50**と平気で言うので、昨日は25**で行ったと言いかえす。

運転手はそんなに安くてはいけないと言い張りますが、それじゃぁ乗らないと身を引こうとする。運転手は、じゃあ特別に40**ならと妥協してくるので、じゃあ30**ねと、にっこり返して交渉成立。

重要なのは最後で、ドアボーイに、「フロントに、“Mr.○○(私)はこのタクシーに乗った”と伝えて」と運転手に聞こえるように言う。ドアボーイはキョトンとしつつも頷きます。これが運転手へのぼったくりを諦めさせるトドメとなります。

其の3：その街に慣れているふうを装う

タクシーが走り出したら運転手に最近の天気を聞く。晴れでも雨でもどうでもよく、「先月来たときは晴れていた」と返す。運転手が先月は雨が多かったけどとか何とか言ってきても、フムフムと聞き流す。

これは運転手にこの客はこの街に慣れてるなと思わせ、渋滞回避と称しての遠回りなどをさせないためのダメ押しです。

最近、海外ではライドシェア（配車サービス：Uber(ウーバー)等）が使えます。車を呼ぶ際、スマホの地図上で乗る場所、降りる場所をピンポイントで指示し、料金も経路も示されるため会話は不要、大変便利です。
それでも海外の見知らぬ街でタクシーを利用する場面は多くあり、上手く利用するコツを知っておくと役に立ちます。

つまらぬ小芝居ですが、嫌な想い出を残さないための結構効果のある立ち廻りです。
家族と行った海外旅行でこの技を使ったとき、家族一同から私は演技をほめられました。普段は気が利かないと言われているのですが・・・。
意外と簡単なので、皆さん、ちょっと勇気を出してお試しあれ、そして楽しい海外旅行を！！！

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