そろそろ旅に出よう！　新型コロナ、日本でも５月８日から感染症法上の位置付けがインフルエンザと同じ“5類”に移行。心配は残るものの、大きな区切りが付きました。
次の長期休暇では久しぶりに旅行をお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。中でも飛行機に乗って行く海外旅行、空港に着いた瞬間からワクワク、気分も高まります。さてその飛行機の移動で経験した話・・・です。

もう３０年以上も前、出張でアメリカのシカゴ空港からロサンゼルス空港へ移動しました。国内線とは言え５時間近い長距離フライト。慣れない商談でぐったりはしたいたものの、席にたどり着き、ドアが閉まり、窓の景色から飛行機が動き始めたことに安堵した時でした。
「オレの席が無い！」　通路の後ろから歩いてきた、赤ら顔でビア樽のように大きなおじさんが絶叫。
多くの乗客は、「どうせ酔っぱらって、席番忘れたんだろ、ったく」　と言う感じで、読書や睡眠に戻りかけました。
しかし私が伸びあがって見回しても、・・・確かに、空席は・・・、無い？
駆け寄ったCA（キャビンアテンダント）におじさんがまくし立てます。近くの乗客は迷惑顔。
それでも飛行機はゆっくりゆっくり滑走路へ向かい始めています。すると突然、CAが、「最後に空席待ちで乗られたお客様手を上げてください」　とあたりを見回します。
私は、“何それ”　と思いましたが、３列前の窓際に座っていた若者がそっと手を上げました。
今度はその若者へ身を乗り出して話すCA。
その間飛行機は止まってしまい、機内は騒然。若者は通路に出て、CAに懸命に説明。
すると突然、別のCAからアナウンスが・・・。
「運航に係る“状況”がありましたので、一旦搭乗ゲートに戻ります」　いくつもの深いため息。

1980年代のこと、当時は予約のあるお客さんが着席した後、CAが空いてる席を数え、空席待ちのお客さんを乗せるということがよくありました。アメリカっぽいでしょ。まあ、予約システムもバッチだったでしょうし・・・。空席カウントの時、ビア樽おじさんは搭乗前にしこたま飲んだビールの影響で、いきなり機内のトイレに入っていたようです。
今度は、私の隣に座っていた、いかにもと言う身なりのビジネスマンが突然立上り、叫びます。
「ドア際のCAが座る席が余っているだろう、それに若者を座らせて、さっさと飛ばせよ！」
アメリカのCAって結構鼻っ柱が強い。イライラもしていたでしょう、ビジネスマンをキッと睨みつけ、
「シャラッ！(お黙り)、乗務員の席にはお客様は座れないの。規定（レギュレーション）なの」
人差し指突きつけ言い返します。“奥様は魔女”のサマンサみたい。これ分かる人、昭和！(笑)
ビジネスマンはすごすごと着席・・・、そして私に、「な、偉そうだろ、エアラインの奴らって」　と例の両掌を上げるしぐさ・・・。しょうがなく私は、「アイベッ（ですよね）」　と相づち・・・。そうこうしているうちに飛行機は搭乗ゲートに戻り、ボーディングブリッジが繋がります。ドアが開いて、バックパックを担いだ若者が残念そうに機内を見回して出ていこうとした瞬間、機内からは、口笛、歓声、拍手・・・、そして、「ネバマイ！(気にすんな)、ガブレッシュ！(神のご加護を)、グッラ！(次は良いことあるよ)・・・」
励ます声に送られ、彼は照れながら背中越しに軽く手を上げ、機外へ。

こうして飛行機は４０分遅れでシカゴ空港を離陸。やれやれと思いつつも、ちょっと良いもの見たかな・・・というほっこりした気持ちを乗せて、飛行機は高度を上げてゆきました。
シートベルトサインが消え、ふと見ると、ビア樽親父は懲りもせずにビールを２本注文。
「１本にしときましょうね。そうしないと、LAX(ロサンゼルス空港)まで我慢できないでしょ！」
CAはウインクしながらバドワイザー*を１本、やさしく手渡しました・・・。

コロナ後、久々の夏の陽光。さあ、まずは家に籠らず、街にでましょうね！！！

＊バドワイザー（Budweiser）は、アメリカ合衆国ミズーリ州セントルイスに本社を持つアンハイザー・ブッシュ エルエルシーが生産・販売するビールの銘柄で、同社の登録商標です。