「年の瀬や　胃の腑に染み入る　鍋の味」と、ばかりに、東京両国でしみじみとちゃんこ鍋に舌鼓打っています。
2022年も色んな事が有りました。
でも結局今年もコロナがニュースにならない日は無かったです。
マスコミ向けにこんなに「安定感」のある迷惑なニュース提供者も滅多にない・・。
困ったものです。
ビフォーコロナの2～3年前は、12月師走と言えば忘年会。
忘年会と言えば「ナベを囲んで」がお決まりコースでしたが、そんな鍋料理もコロナの為に、
鍋を囲む事が自粛気味となってしまいました。
当時は売上上昇中だったのに。結局今年も鍋料理屋さんは営業自粛と再開の繰返し、お店受難継続中です。
鍋料理に立ちはだかる姿の見えない敵コロナ。コロナの好き勝手な変異と拡散で、
「鍋料理、絶滅危惧食レッドリストの恐れが・・」なんてのは面白くもないブラックジョークですよね（怒）。

さて、気を取り直して我が国の鍋料理の歴史を調べると、始まりは、実質的には江戸時代からだそうです。
意外と新しいですね。当時の食べ方は一人鍋。
肉食が憚（はばか）られていたので、具材はアサリ、ドジョウ、豆腐などが中心でした。
アサリ鍋、ドジョウ鍋、豆腐鍋ですね。
しかし庶民の間では（度々（たびたび）ご法度（はっと）の）フグ鍋も隠れた人気だったようです。
「恐ろしき　モノを食いたし　雪の空」と言った川柳が残されています。
雪でも降りそうな寒い日に、長屋の旦那さんが「こんな日はフグ鍋で一杯いきたいねぇ・・」
なんて調子でしょうか。ただ、当時の調理ですからこれはもう命がけです。
文字通り「フグは食いたし、命は・・」。
皆さんそれでも食べたくて、霊験あらたかなお守りをフトコロに召し上がられたとか。

しかしお守りご利益（ごりやく）の甲斐なく、「お当たり」になる方もいらして、
昨日までのお名前が変わってお寺のご厄介になられる。
葬儀の場では「あの人はお守りの更新をケチったんじゃないの？お守りにはご利益の期限ってものが有るんだよ。
だからお守りよりもフグの毒が効いちゃったよ。きっとあの世で後悔してますよ。」
なんて妙な講釈とお悔み？が有ったとか無かったとか。
その一方では「フグ売りは　一生後家（ごけ）に　恨みられ」と言う句もございます。
「亭主の仇～」とばかりに未亡人に「仇討ち」で狙われたりしたらそれはもう大変。
こちらは「フグは売りたし、命は・・」。などと実におっかない。こうなるとフグを売る方も命懸けでしたかな（笑）。

明治時代になって、「肉食」が「文明開化」の象徴になり、牛ナベ、牛スキが出現しました。
西洋諸国に文明国日本をアピールするためです。
そしてこのあたりから鍋を囲むという風習が芽生えたようです。
このころの逸話に、「チョンマゲと　ザンギリ頭が　ナベ囲む」と言うのがありまして、
いっとき鍋料理は和洋混交のシンボルでした。
何か滑稽にも思えますが、目に浮かべると、西洋列強に早く肩を並べたい明治の日本人の強い思いが
鍋料理に伝わって、少々感慨深いものが有ります。

寄せ鍋、石狩鍋、ちゃんこ鍋・・鍋料理は日本が世界に誇る料理文化です。
近年はキムチ鍋にカレー鍋、トマト鍋と、鍋の世界もグローバル化して
外国人にも鍋料理ファンが増えているそうです。
同じ鍋を囲むと仲間意識が作られて、更には、肉、魚、野菜の食材を温めて食べるので、
栄養バランスが取れて体の芯から温まり健康にも良い。やはり鍋料理良いですね。

筆者の好きな言葉に「やさしい言葉一つで冬中暖かい」と言う諺（ことわざ）が有ります。
年の暮れは、気の合った仲間と囲む鍋料理に、熱燗少々でホンノリ温まり、
ゆったりとした気分で年を送れればいいなあと願います。
さて、間もなくやって来る来年はどんな年になりますか・・。

それでは皆様、健やかで良いお年をお迎え下さいませ。