「雨宿り」のヒューマンドキュメンタリー
~本降りに なって出ていく 雨宿り~

執筆:役員室 山口 卓

さて今年も梅雨の季節。今回はこの時期に相応しいテーマをお届け致します。
江戸時代に作られた「雨宿り」の川柳から学ぶ人間学です。江戸時代は今と違って、
テレビで気象予報士のお天気おねーさんが、毎朝「傘を忘れずに気を付けていってらっしゃ~い♪」
と笑顔で教えてくれません。折り畳み傘もないし、突然降りだした雨に「雨宿り」の機会が
多かったのでしょう。そのおかげで、お江戸川柳には多彩な人間模様の「雨宿り」の名句が
多くあります。では早速ご案内致しましょう。

ある長屋での雨宿りは…?

さてここは、お江戸のある長屋です。
「あー今日は久し振りにいい天気だ」で旦那がちょいとお出かけです。
気分よく外を歩いていると・・、突然雲行きが怪しい。ピカピカが始まります。
「こりゃあマズいぜ! かみなりさま、くわばらくわばら・・」。
「雷の 鳴る時ばかりは さまを付け」
「地震、雷、火事、オヤジ」。これが江戸時代にはおっかなかったのだそうです。
落雷なんて今でも怖いですものね。ただ、ちょっと笑えますね。
しかし、突然の雷雨に旦那さまはさあ大変。急いで雨宿りしなくちゃ。
「オッと、この店でちょっと」。と、道路脇の店の中に入って避難です。
「いりもせぬ モノの値を聞く 雨宿り」
どうせ買い物なんてしないのに、これじゃ店主はダブルで迷惑なのですがねえ・・。

お寺のお堂の軒下を見てみると

その一方で、近くで遊んでいた小僧さん達は、お寺の立派なお堂の軒下が絶好の避難場所。
でもここでは暇ですよねえ。
「雨宿り 額(がく)の文字を よく覚え」
情景が目に浮かんで来ます。当時はスマホなんか無いですからねえ。
ヒマを持て余し、普段は興味ないのに、漢字のにわか勉強ですな。感心ですかね(笑)。
でも、にわか向学心はいつまでも続きません。ふっと上の方を見上げるとお寺の鐘が有ります。
退屈で、ちょっとしたいたずら心が湧いてきます。しかし当時のお寺の鐘は、禁断の・・。
「雨宿り ごおんとついて 叱られる」
江戸時代、お寺の鐘は時刻を知らせる大事なもの。これをやっちゃあいけませんねえ。

そうこうしていると、ますます雨足が強まって来ます。
「あー、こりゃもうダメだ・・」と、ばかりに、
先ほどのお店に居る旦那は買い物どころではなくて・・
「本降りに なって出ていく 雨宿り」
これ良く分かります。地味ですが秀作ですね。
心配になって我慢できず最悪のタイミングに飛び出してずぶぬれになってしまう。
現代でも色々な所で見られるパニック人間模様。人のサガですね。

お寺にて。

一方お寺では、「あっ、雨が少し弱くなってきた。もう外に出ても良いかな?」なんて・・。
「雨宿り ちょちょっと出ては ぬれてみる」
小僧さんの姿が目に浮かぶ何ともユーモラスな一句です。

雨が降り始めて小一時間ばかりたったでしょうか・・。
あれっ、薄日が差してきました。ふと西のほうを見ると・・。
「雨宿り はるか向こうは セミの声」
さあ、もう少しで雨があがる。虹の向こうは梅雨明けで、本格的な夏がもうすぐやって来そうですね。

こうしてみると江戸時代の「雨宿り」の川柳は、人間心理に根差した人生訓の宝庫と言えそうです。
皆さんいかが感じられましたか?

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