シリコンバレーだより4
アメリカシリコンバレー近況とAI活用

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2023年7月26日

MIND ITリサーチオフィス(以下ITRと呼ぶ)は、2005年10月に米国最新技術動向を調査することを目的として、米国カリフォルニア州シリコンバレー地区に設立されました。その後15年以上シリコンバレーにオフィスを構え、米国技術動向の調査を行っております。

2022年度は2名体制で調査活動を行ってきましたが、今年3月に前任者が帰任し、現在は1名体制で調査活動を実施しております。私は昨年12月に米国へ赴任し、生活立上と平行してラスベガス、フロリダ、サンフランシスコ、サンノゼ等で開催される様々なイベントへ参加してきました。

今後もITインフラに関わる技術動向について、DX・AI・量子コンピュータなど様々なトピックスについて情報発信を続けていきます。

シリコンバレー近況

昨年末以降、シリコンバレーでは例年になく雨が多く、皆さんのイメージとは異なる日々が続いていました。そしてその天候に同期する様に、いくつか出来事が起こりました。一つはシリコンバレー銀行の経営破綻よるスタートアップ企業への影響、そしてもう一つは大手テック企業で大規模なレイオフが実施されたことです。

しかし、今年度に入ってからはカラッと晴れた日が続き、ずっと暖かいイメージのシリコンバレーが戻ってきました。それに応えるように、レイオフで発生した退職者がこれを機にスタートアップを始める新しい動きが出てきたり、テック業界からの人材流出により他業界やスタートアップにおけるイノベーション創出が加速するなど、業界が前向きに進んでいる様子が感じとれるようになっています。シリコンバレーは未だベンチャーキャピタルの投資額が全米1位のままであり、力強さは衰えていません。

そんな現在のシリコンバレーでは、業界におけるトップトピックスの一つとして、マイクロソフトが検索エンジンへのChat GPT技術を実装することに端を発した、AI関連が賑わっています。

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Generative AIの広がり

近年、ハイブリッドワークの広がりやクラウドアプリケーションの活用などで、ITインフラは複雑化してきました。ネットワーク・セキュリティーの領域では、大量のアラート発生により運用業務が輻輳することから、状況の一括把握が求められてきました。

各ベンダーはそうした状況に対応するため、可観測性(Observability)の向上や従来のAI(分析AI、Analytic AI)を用いることで、人が対応するよりずっと早く且つ多くのデータを分析し、意思決定に繋げるようにサービスをアップデートしてきました。そこにChatGPTなどのGenerative AIが加わることで、よりシンプルな操作で簡単に必要な情報を入手しやすくして、ユーザエクスペリエンスの向上を目指すようになっています。Generative AIでは、過去のデータに基づく予測だけではなく、データがない中からこれまでの知見・経験を基に未来を予測する検証も進んでおり、例えばITインフラのトラブルを未然に防ぐなど、運用の完全自動化につながる可能性なども秘めています。

AI活用の懸念

しかし、Generative AIはまだまだ成長段階にあるため、様々な懸念があるのも事実です。サイバーセキュリティーの領域においては、守る側だけでなく攻撃する側もAIを用いており、ランサムウェアの攻撃メール作成や、悪意のあるプログラム自体を作成する事例なども出てきています。また、プライバシーや倫理的問題への懸念もあります。

EU(欧州連合)では2021年にリスクに応じてAIに規制を設けるAI法が提出されましたが、先日それにGenerative AIを盛り込むべきという修正案が採択されました。AIが作成したものはそれを明示し、またAI自体にもどのようなトレーニングがされているのか透明性の義務を課すというものです。将来的にはAI企業がトレーニング情報を開示しない場合、サービスを提供できなくなる可能性が出ています。

また、米国でも公聴会にAI企業が呼ばれ、規制やルール作りに関する議論がされました。一定以上の能力を持つモデルを開発・リリースするAI企業には、ライセンスとテストを義務付けるよう企業側からもアイディアが提起されるなどリスク管理が急がれています。

どのようにAIを活用するか

このように、Generative AIはまだまだ黎明期と考えられ、国や企業においては積極利用だけでなく慎重論も強い状況です。各メーカーにおいてはAIを自社ソリューションへ導入する動きは大きいものの、Generative AIについては積極的に大規模活用するか、それとも少しずつ活用を進め様子見をするか、判断が分かれています。積極的に利用するメーカーは、既存の汎用的なモデルを利用するだけではなく、よりビジネス用途や各領域に特化・カスタマイズされた新しいモデルの開発を計画し、ビジネス成長の中心に置こうともしているようです。

企業にとってはAI(またはAIが組み込まれたサービス)を活用することで、生産性を上げ、エクスペリエンスを向上することが可能です。ただし、AIを活用するには、それ自体を目的とするのではなく、現状の課題を解決するためにどのようなソリューションが必要なのか、導入した場合にどのようなビジネス成果につながるのかを十分に検討する必要があります。

また、AIが広がることで人の仕事が奪われるのではないかという心配の声も聞こえる一方、単純作業をAIに任せることで人はより人らしく生きられるようになるという考えもあります。今年から来年にかけてはAIによりテクノロジーに大きな進化が見られると言われています。人の働き方や求められるスキルも変わってくるため、企業においてはスキルトランスフォーメーション(リスキリング)をより重視する流れもでてくるのではないでしょうか。

まとめ

新しいテクノロジーが出てくると、生産性やエクスペリエンスの向上に繋がっていくことは間違いありません。しかし、良い面だけでなく、それにより新たなセキュリティー対策や新しいスキルが求められてくるのも事実です。

MINDはネットワーク、セキュリティー、クラウドといったインフラ全般について、企業の課題に応じた製品・サービス・ソリューションを提供しています。我々ITリサーチオフィスは、北米におけるAIや自動化などITインフラにかかわる最新動向を調査し、MINDの製品・サービス・ソリューションを通してお客様のビジネス成長につながる活動を続けていきます。

  • マイクロソフトは、マイクロソフトコーポレイションの登録商標です。
  • ChatGPTは、OpenAI OpCo, LLCの登録商標です。

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