DXの理解に必須!「DXレポート」が発する重要なメッセージとは

  • # DX推進
  • # 2025年問題
  • # デジタルディスラプション

2022年6月24日

いま、世界中のあらゆる業種、規模の企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組もうとしています。政府も強く危機感を感じており、2018年9月に経済産業省が「DXレポート~ITシステム2025年の崖」を発行するなど、DXの推進が不可欠であるという姿勢を見せました。これをきっかけに、デジタルによるビジネス変革が日本企業に認知され始めましたが、ITの取り組みについて政府が明確な指針を示しておらず、その表現もあいまいだったこともあり、多くの企業が、「DXとはデジタルを活用した業務効率化」もしくは「レガシーシステムの刷新」という誤った認識をしてしまいました。そこで、DXを正しく進めるにはどのようにすべきか、考えてみましょう。

「デジタルディスラプション」の登場に政府が警鐘を鳴らす

DXレポート(※1)では、経営戦略における現状と課題について「あらゆるモノがつながるIoT等を通じて活用できるデータが爆発的に増加し、また、AI、クラウド、マイクロサービスやクラウドを活用したアジャイルアプリケーション開発、ブロックチェーン、AR/VR等データを扱う新たなデジタル技術の活用の可能性が広がっている」と具体的なキーワードを用いて説明しています。

事実、すでにあらゆる産業においてデジタル技術を取り入れる動きが加速しており、これまでにはなかったビジネスモデルを展開する新規参入者が続々と登場し、市場の形を根底から覆しています。これがいわゆる「デジタルディスラプション」(破壊的イノベーション)です。

総務省でも令和元年版情報通信白書(※2)にてデジタルディスラプションの例を紹介しており、例えば、Amazonをはじめとするインターネット通販サービスの台頭により、多くの大手の小売事業者が経営破綻を余儀なくされたほか、インターネット動画配信サービスが登場したことで、大手レンタルビデオ・DVDチェーンでもレンタル業から撤退を宣言するなど、既存のビジネスモデルを文字通り“破壊”し続けています。

このように、デジタル技術を武器に市場に参入するディスラプター(破壊者)の登場によって、あらゆる市場でゲームチェンジが起きており、日本企業もこの動きに乗らなければ、未来が危ういとDXレポートで指摘しました。

イメージ:デジタルマーケティング

「DXレポート」の本来の目的とは?

上述したように、いまや全企業がデジタルを使ったビジネスモデルの変化を求められていますが、DXの実現にはいくつか障壁があります。その代表的なものがDXレポートの指摘する「2025年の崖」です。

同レポートでは、あらゆる産業でデジタル技術の活用による新ビジネスモデルの創出が求められると述べており、複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが取り組みの足かせとなっていると指摘しました。

同レポートの調査によると約8割の企業が「レガシーシステム」を抱えており、その内、約7割が「レガシーシステムが自社のデジタル化の足かせになっている」と回答するなど、レガシーシステムの存在に危機感を覚えているものの、実際にはシステム刷新に取り組めていないのが現状です。また、既存システムが社内に残っていると、2025年までに予想されるIT人材の引退やサポート終了などによるリスクの高まりに伴う経済損失が「2025 年以降、最大年12兆円に上る」と警鐘を鳴らしています。

このようにレガシーシステムを抱えたままでは、いずれ来たる爆発的なデータ量の増加に対応できず、結果としてDXが進まなくなり、最悪の場合、デジタル競争の敗者となるリスクも出てきます。加えて、いずれ既存システムを運用する担い手がいなくなり、技術的な負債を抱えるとともに、業務基盤を維持、継承できなくなる危険性もあります。このDXレポートの内容を重く受け止め、いち早くDXに取り組む企業も現れています。

政府の意図としては、既存ビジネスに費やすコストや時間を削減し、それよって生まれたリソースを新たなビジネスモデルの創出に割くことが重要であるということを示しています。にもかかわらず、DXの意図を履き違え、単純に「業務効率化」や「レガシーマイグレーション」にのみ取り組む企業が多かったのが実情です。

「DXレポート2」および「DXレポート2.1」で記された課題とは

そこで、経済産業省では「DX=レガシーマイグレーション」という誤った認識を改めるべく、2020年12月の第一版を反省するという異例の但し書きをしたうえで、「DXレポート2(中間取りまとめ)」(※3)を発刊。さらに2021年8月、DXレポート2(中間取りまとめ)を補完する形で、「DXレポート2.1(DXレポート2追補版)」(※4)を発刊し、デジタル変革後の産業の姿を示しながら、政策を検討した内容を公表しました。

なお、DXレポート2における独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の調査によると、2020年10月時点で、約95%の企業は「DXにまったく取り組んでいないレベルにある」もしくは、「DXの散発的な実施に留まっているに過ぎない段階」と回答するなど、同レポートでも日本のDXの現状について触れられています。

DXレポート2.1では、「ユーザー企業とベンダー企業の共創の推進」の必要性を示しています。ラン・ザ・ビジネス(現行システムの維持管理、つまり運用保守)からバリューアップ(価値の最大化)へと経営の軸を移すべきだと述べており、アジャイル開発によって環境変化に即時対応できるようになれば、ユーザー企業とベンダー企業の垣根がいずれなくなっていくという、いわばデジタル活用における理想像が記されています。

さらに、デジタル産業を目指す企業が抱える「3つのジレンマ」を指摘。ユーザー企業に共通するのが、目先の業績が好調のため変革に対する危機感がないとする「危機感のジレンマ」と、技術が陳腐化するスピードが速く、時間をかけて学んだとしても、習得したときには古い技術となっているという「人材育成のジレンマ」です。また、ベンダー企業では、ユーザー企業をデジタル企業へ移行する支援を行うことにより、最終的には自分たちが不要になってしまうという「ビジネスのジレンマ」が存在します。

DXを加速させるためには経営者のビジョンとコミットメントが必要不可欠であり、従業員もそれに腹落ちしなければ3つのジレンマからの脱却も難しいでしょう。一方、ベンダー企業としては、技術のコモディティ化を見据え、最新技術に精通し続けることが重要になります。

企業に求められる具体的なアプローチ

これらの課題に対し、企業は具体的にどのように対処していけばいいのでしょうか。DXレポート2.1では、「デジタル社会」と「デジタル産業」における目指すべき姿として以下を挙げています。

目指すべきデジタル社会の姿

  • 社会課題の解決や新たな価値・体験の提供が迅速になされる
  • グローバルで活躍する競争力の高い企業や世界の持続的発展に貢献する企業が生まれる
  • 資本の大小や中央・地方の別なく価値創出に参画することができる

目指すべきデジタル産業の姿

  • 課題解決や新たな価値・顧客体験をサービスとして提供する
  • 大量のデータを活用して社会・個人の課題を発見し、リアルタイムに価値提供する
  • インターネットに繫がってサービスを世界規模でスケールする
  • 顧客や他社と相互につながったネットワーク上で価値を提供することで、サービスを環境の変化に伴って常にアップデートし続ける
  • データとデジタル技術を活用し、マルチサイドプラットフォームなどのこれまで実現できなかったビジネスモデルを実現する

DXレポートによると、DXの定義は「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立する」ことです。つまり、企業が競争上の優位性を確立するには、顧客や社会の課題を的確かつ迅速に捉えるとともに、素早く変革し続ける能力を身に付けることが重要になります。この足かせとなるのが、「レガシーシステム」と、属人的かつ安定志向を望む「レガシー企業文化」です。

社会の変化のスピードが格段に上がっている中、企業が生き残るには、中長期的な課題を見据えながら短期間の事業変革を達成し続ける必要があります。まずは短期間で解決できる課題を明らかにし、もしツール導入によって解決できるようであれば、すぐに取り組む。これこそがDXのスタートラインなのです。この変革のアプローチに継続的に取り組むことが、現在の企業に求められるDXのあるべき姿ではないでしょうか。

新たな価値の創出

「DXレポート2.1(DXレポート2追補版)」が指摘するデジタル産業における新たな価値創出のイメージ

DX推進を支援するMINDのソリューション

政府が進めるDXの動きを支援するソリューションを、MINDは数多く提供しています。例えば、「MIND ICC」はDXの運用を支える統合運用サービスとして、専門エンジニアが24時間365日、国内・海外の企業の情報システムを監視、運用、保守することでシステムの安定稼働を実現します。

また「MINDデータセンター」は、クラウドサービス、各種ネットワークサービス、監視運用サービスなどを組み合わせることで、IT基盤として利用可能です。安定稼働、DR、セキュリティー対策を確実に実現したうえで、DXの基盤として機能します。

さらに、DXにおけるセキュリティーの前提となる、社内外問わず全てのアクセスを“信頼できない”ものとして一つひとつの安全性を検証する「ゼロトラスト」を実現すべく、その構成要素であるEDR(Endpoint Detection and Response)やマネージドセキュリティーサービスなどのセキュリティーサービスも展開しています。

ここまで見たように、DXはあらゆる産業で避けられない動きになっています。今後は、MINDをはじめとしたパートナーの支援も考えながら、企業は競争力の維持と拡大を考える必要があるでしょう。

関連サービス・製品

参考文献

MINDメールマガジン
「With MIND」ご案内

三菱電機インフォメーションネットワーク(MIND)が、多くのお客様の声にお応えして、メールマガジンを始めました!
MINDメールマガジン「With MIND」は、最新トレンド、新製品・サービスなど広いテーマ情報をお届けします。
きっとお客様の仕事の質の向上に繋がる気づきがありますので、ぜひご登録ください。

  • MINDが行う、オンライン/オフラインのイベントやセミナーの開催情報をいち早くご案内いたします。

  • MINDの製品・サービスのご紹介や、新製品のリリース案内、キャンペーン情報などをご案内いたします。

  • 市場トレンドや、業務改善のポイントなど、今知っておきたい情報をお届けします。
    ひと息つけるコンテンツも!